ビジネスを成功させるには、事業の規模を客観的に把握し、経営資源の配分を最適化する必要があります。そこで重要となる指標がGMV(流通取引総額)です。GMVと他の指標を組み合わせることで、収益性や成長性を見極められます。
本記事では、GMVの概要、計算方法、売上との違いなどを詳しく解説します。

GMV(流通取引総額)とは
GMV(Gross Merchandise Value)とは、一定期間内にプラットフォームやマーケットプレイス上で成立した商品やサービスの取引金額の合計です。出品者や加盟店による販売分を含む、プラットフォーム全体の取引規模を示します。
GMVは自社ECサイトやD2Cの販売規模を示す際に使われることもありますが、その場合は第三者による取引が含まれないため、総売上高とほぼ同じ数値になります。

GMVの計算方法
GMVは、以下の計算式で算出します。
GMV = 平均注文額 × 取引数
たとえば、あるプラットフォームにおける1か月の平均注文額が6,500円、取引数が200件だった場合、GMVは以下のようになります。
- 平均注文額:6,500円
- 取引数:200件
- GMV:6,500円 × 200件 = 130万円

GMVと売上の違い
GMVはプラットフォーム上で成立した取引の総額で、値引きや返品分などは差し引きません。一方、売上は事業者が実際の収益として計上する金額を指します。
たとえば、D2CビジネスとフリマアプリのGMVがどちらも100万円だったとします。D2Cは自社の商品を販売するため、返品や値引き分などを除けば、GMVのほとんどが売上になります。
一方、フリマアプリ運営事業者のGMVには、出品者など第三者による取引額が含まれるため、GMVの全額ではなく、販売手数料や広告料などが売上として計上されます。販売手数料による売上は、GMVにテイクレート(手数料率)を掛けた金額です。たとえば、テイクレートが10%なら、GMV100万円に対する販売手数料による売上は10万円です。フリマアプリ運営事業者に出店料や広告料などの収益がある場合は、それらも含めたものが売上となります。
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指標 |
意味 |
用途 |
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GMV |
プラットフォーム上で成立した取引の総額。値引きや返品分などは差し引かない |
取引量やプラットフォームの規模を把握する |
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売上 |
事業者が得る収益。収益として計上される範囲は、ビジネスモデルや会計処理方法によって異なる |
事業実績や収益規模、財務パフォーマンスを把握する |

GMVの活用方法
事業規模や成長性を把握する
GMVを見ることで、そのプラットフォームの事業規模や成長性を直感的に把握できます。たとえば、年間GMVが1億円から5億円に増加していれば、取引規模が前年比で5倍に拡大したことが分かります。
マーケットプレイス型ビジネスでは、テイクレートが一定であれば、GMVの増加に伴って販売手数料による売上も増加します。そのため、GMVはプラットフォームの取引規模や成長性を判断する指標として重視されます。
販売戦略を見直す
プラットフォーム上のGMVを商品カテゴリーや価格帯、出店者別に分析すると、どの取引が全体の規模に貢献しているかが分かり、販売戦略の見直しに役立ちます。たとえば、価格帯の異なる同カテゴリー商品の取引を比較して、以下のようになったとします。
- 3,000円の商品が100点取引された:GMVは30万円
- 8,000円の商品が50点取引された:GMVは40万円
取引数量は3,000円の商品が2倍ですが、GMVは8,000円の商品のほうが大きく、プラットフォーム全体の取引規模により貢献していることが分かります。この結果をもとに、注力するカテゴリーや価格帯、出店者向けの販促施策などを検討できます。
季節ごとの需要を見つける
GMVを月別や前年同月比で比較すると、プラットフォーム全体やカテゴリーごとの需要の変化を把握し、キャンペーンや出店者支援の計画に活用できます。たとえば、過去数年間、冬のホリデーシーズンに特定カテゴリーのGMVが大きく増加している場合、その時期に合わせて特集や販促施策を実施できます。
さらに、前年同月比の伸び率が年々高まっていれば、そのカテゴリーの需要が拡大している可能性があります。出店者へ在庫確保を促したり、対象商品の品ぞろえを充実させたりすることで、品切れによる機会損失を抑えられます。
ステークホルダーへの説明材料にする
GMVは、投資家や株主などに事業の伸びしろを示すのに役立ちます。成長に向けた投資を続けている企業では、現時点の売上や利益だけでは、将来どこまで事業を伸ばせるかを判断しにくいからです。
売上がまだ大きく伸びていなくても、GMVが継続して増えていれば、利用や取引そのものは拡大していると説明できます。こうした実績を売上やテイクレートなどと併せて示すことで、今後どのように収益を伸ばしていくのかをステークホルダーに伝えやすくなります。

GMVの欠点
- 収益性は分からない:GMVが増加していても、利益が増えているとは限りません。たとえば、値引き販売や広告の増加によってGMVだけが伸びている場合、利益率はむしろ低下している可能性があります。
- 他社との比較には使えない:GMVに送料を含めるか、返品分や割引分を差し引くかは統一されていないため、GMVだけで単純に比較することはできません。
- 顧客との関係性は把握できない:GMVだけでは顧客維持率(リテンション)やリピート率までは把握できません。たとえば、一部の高額購入者によってGMVが支えられている一方で、アクティブユーザー数が減少しているケースもあります。

GMVと合わせて活用すべき指標
売上
GMVと売上の両方を見ることで、取引規模の拡大がプラットフォーム運営事業者の収益につながっているかを確認できます。たとえば、返品や交換を無料にすると購入者が安心して注文できるため、取引件数が増え、GMVの拡大につながる可能性があります。しかし、返品やキャンセルが増えれば、販売手数料として確定する売上は減るため、GMVほど売上が伸びないことがあります。
利益率
GMVと利益率を合わせて見ることで、取引規模の拡大が利益につながっているかを確認できます。たとえば、GMVが伸びている一方で利益率が低下している場合は、利用者や出店者を増やすためのキャンペーン、送料の補助などにかかる費用が増え、採算性が悪化している可能性があります。
顧客獲得単価
顧客1人あたりのGMVとCAC(顧客獲得単価)を比べることで、顧客獲得にかけた費用に対して、どの程度の取引が生まれているかを確認できます。たとえば、100万円の広告費をかけて500人の顧客を獲得し、500万円のGMVを達成したとします。この場合、CACは2,000円、顧客1人あたりのGMVは1万円です。テイクレートが10%であれば、顧客1人あたりの販売手数料による売上は1,000円となり、CACの2,000円を下回ります。
この場合、取引は生まれていても、初回購入だけでは顧客獲得にかけた費用を回収できていません。粗利率やLTV(顧客生涯価値)なども合わせて確認し、継続的な利用によって獲得コストを回収できるかを判断することが重要です。
平均注文額
GMVとAOV(平均注文額)を合わせて見ると、GMVの成長要因を把握できます。たとえば、GMVは伸びているがAOVは横ばいなら、1注文あたりの金額は変わっていないため、注文件数の増加が成長を牽引していると考えられます。一方、GMVもAOVも伸びている場合は、1注文あたりの購入額の増加がGMVを押し上げています。
コンバージョン率
CVR(コンバージョン率)を見れば、GMVが伸び悩む原因を切り分けられます。たとえば、GMVは横ばいでコンバージョン率が低下しているなら、集客はできているものの、商品ページで魅力を伝えきれていない、あるいは購入までの流れがスムーズでない可能性があります。一方、コンバージョン率は保たれているのにGMVが伸び悩んでいる場合は、アクセス数の不足や平均注文額の低下など、別の要因を確認する必要があります。
GMVを改善する方法
ユーザーを増やす
購入者と出品者の双方を増やすことで、プラットフォーム上で取引が成立する機会を増やせます。購入者を増やす方法としては、広告による新規ユーザーの獲得や初回割引クーポンの提供などがあります。一方、出品者を増やすには、手数料を見直したり、商品登録にかかる作業を減らしたりするなど、販売を始めやすい環境を整えることが有効です。
たとえばYahoo(ヤフー)ショッピングは、初回のアプリ利用で最大半額割引になるクーポンを提供しています。また、出店者向けには初期費用を0円とし、ストア構築支援キャンペーンを実施するなど、新規出店の負担を抑えています。
1件あたりの取引額を増やす
1件の取引で購入される金額を増やすことで、注文数が同じでもGMVは大きくなります。主な施策として、アップセルとクロスセル、複数購入への特典付与などがあります。顧客が商品ページを閲覧したり、チェックアウトに進んだりするタイミングで提案することで、購入までの流れを妨げにくく、自然な動線で案内できます。
たとえばZOZOTOWN(ゾゾタウン)では、商品ページで関連商品を提案しているほか、対象商品をまとめて購入するとポイント還元率がアップするキャンペーンを実施しています。
購入頻度を増やす
既存顧客のリピート購入を促すことで、一定期間内の取引回数を増やせます。ポイントプログラム、会員特典、期間限定キャンペーン、ユーザーの関心に合わせた商品やセール情報の配信などを通じて、再購入のきっかけをつくれます。
たとえば、楽天市場のお買い物マラソンでは、期間中に1,000円(税込)以上購入したショップの数に応じて、獲得できる楽天ポイントの倍率が上がります。複数の店舗で購入するほど特典が大きくなる仕組みによって、期間中の購入回数を増やす動機をつくっています。
商品探しから購入までをスムーズにする
スムーズな購入体験を提供することで、途中離脱を減らし、取引の成立件数を増やせます。主な施策として、商品カテゴリーや価格などで商品を絞り込みやすくする、購入時の入力や操作を減らす、利用できる決済手段を増やすといった方法があります。
たとえば、Amazon(アマゾン)の商品ページには、今すぐ買うボタンが設置されています。タップすると、カート画面を経由せず、配送先や支払い方法などを確認してすぐに注文できます。
越境ECに取り組む
越境ECに取り組むことで、海外の顧客にも商品を販売できるようになり、プラットフォーム上の取引機会を広げられます。越境取引を促進するには、多言語で商品を閲覧できるようにするほか、海外向けの決済や配送に対応するなど、購入者と出品者の負担を減らす仕組みを整えることが重要です。
たとえばメルカリは、越境取引に特化したメルカリグローバルアプリを米国でリリースしています。これにより、米国のユーザーが日本のメルカリに出品された商品を購入できるようになりました。
まとめ
GMVはシンプルな指標ですが、他の数値と組み合わせて読むことで、事業の状態を的確に把握できます。売上や平均注文額、利益率と併せて確認しながら、収益性を損なわずにGMVを伸ばせる施策に取り組んでみてください。
GMVに関するよくある質問
GMVとは?
GMVとは、ある期間にプラットフォームやマーケットプレイス上で成立した取引の総額です。
GMVの計算方法は?
GMVは、平均注文額 × 取引数で求められます。
GMVと売上の違いは?
GMVはプラットフォーム上で成立した取引総額、売上はプラットフォーム運営事業者が得た収益を指します。
GMVの活用方法は?
- 事業規模や成長性を把握する
- 販売戦略を見直す
- 季節ごとの需要を見つける
- ステークホルダーへの説明材料にする
GMVを伸ばす方法は?
- ユーザーを増やす
- 1件あたりの取引額を増やす
- 購入頻度を増やす
- 商品探しから購入までをスムーズにする
- 越境ECに取り組む




