ECサイトの売上を伸ばすためには、新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客に継続して利用してもらうことが重要です。しかし、競争の激化や顧客ニーズの多様化により、良好な顧客関係を維持することは容易ではありません。
そこで重要となるのが顧客維持率です。顧客維持率を高めることで、リピート購入の促進や顧客生涯価値(CLV)の向上、そして安定した売上の確保につなげることができます。
本記事では、eコマースにおける顧客維持率の意味や計算方法、向上させる8つの方法、そして市場動向について詳しく解説します。顧客維持率の改善やリピーターの増加を目指している方は、ぜひ参考にしてください。

eコマースの顧客維持率とは
eコマースにおける顧客維持率とは、一定期間内に既存顧客が継続して商品やサービスを購入した割合を示す指標です。
顧客維持率が高いほどリピート購入する顧客が多く、安定した売上につながりやすくなります。また、顧客との良好な関係を維持できているかを把握する指標としても活用されています。

eコマースの顧客維持率に関連する指標
- 顧客生涯率(CLV):1人の顧客との取引全体を通じて得られる売上額を示す指標です。たとえば、顧客1人あたりの平均購入回数が3回、1回あたりの平均購入額が4,000円の場合、CLVは12,000円となります。CLVが向上している場合、購入回数が変わらなくても顧客1人あたりの購入金額が増加している可能性があります。
- チャーンレート(顧客離脱率):一定期間内に取引を停止した顧客の割合を示す指標です。一般的に、チャーンレートが低いほど顧客維持ができている状態といえます。
- 顧客ロイヤルティ率:既存顧客のうち、ロイヤルティプログラムに参加している割合を示します。ロイヤルティプログラムへの参加率が高いほど、再購入意向やブランドへの愛着が高い傾向にあることがわかります。
これらの指標をあわせて分析することで、eコマースの顧客維持施策の効果をより多角的に把握できます。顧客維持率の向上は既存顧客からの継続的な売上の確保につながるため、新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客との関係構築やリピート購入の促進が重要です。

eコマースにおける顧客維持率の平均値
株式会社シナブルが2025年に実施した調査によると、ECサイト利用者の約9割が同じECサイトでリピート購入した経験があると回答しています。特に、食品や日用品、美容関連の商品はリピート購入されやすい傾向がみられます。
また、最も利用するECサイトでの購入頻度は、「月に1回程度」が46.0%と最も多く、次いで「半年に1回程度」が41.6%でした。
リピート購入の理由としては、「価格が安かった」が63.0%で最も多く、「送料無料」が46.6%、「商品の質や品揃えが良かった」が38.9%と続いています。
これらの結果から、eコマースにおける顧客維持率の向上には 、価格、利便性、商品価値のバランスが重要であることがうかがえます。

eコマースにおける顧客維持率の計算方法
顧客維持率は、月次や四半期、年次といった一定期間を設定し、以下の計算式で算出します。
顧客維持率(%)=(期末顧客数-期間中の新規顧客数)÷期首顧客数×100
各項目の意味は次のとおりです。
- 期末顧客数(CE):期間終了時点の顧客数
- 新規顧客数(CN):期間中に新しく獲得した顧客数
- 期首顧客数(CS):期間開始時点の顧客数
たとえば、1月の初めに顧客数が500人おり、その月に100人の新規顧客を獲得した結果、月末時点の顧客数が450人だった場合、顧客維持率は次のように計算できます。
この場合、1月初めに存在していた顧客のうち、70%が継続して利用していたことを意味します。
eコマースの顧客維持率を左右する主な要因
- スムーズな購買体験:商品を探しにくかったり、購入手続きが複雑だったりすると、顧客は途中で離脱しやすくなり、リピート購入にもつながりにくくなります。そのため、ページの表示速度やモバイル対応、直感的なナビゲーションなどのUI/UXの質は、顧客満足度や継続利用を左右する重要な要素です。
- パーソナライズされた商品提案:顧客の興味やニーズに合わない商品ばかり提案されると、商品への関心が高まりにくくなります。一方で、閲覧履歴や購入履歴に基づいた商品レコメンドは、自分に合った提案だと感じやすく、新たな商品との出会いにつながるため、継続的な購入を促進する効果が期待できます。
- 配送品質:配送の遅延や配送状況がわかりにくい場合、顧客満足度の低下につながり、リピート購入を妨げる可能性があります。一方で、配送状況を適切に通知し、予定どおりに商品を届けることは、顧客との信頼関係の構築につながります。
- 返品や交換のしやすさ:返品や交換の手続きが複雑だったり、返品条件がわかりにくかったりすると、顧客は購入を躊躇してしまいがちです。返品や交換の手続きが簡単でわかりやすく、返品ポリシーが明確なECサイトは、顧客が安心して利用できるようになります。
- 顧客フィードバックの活用:顧客の意見や要望が反映されない場合、商品やサービスに対する不満が解消されず、そのまま残ってしまいます。アンケートやレビューなどで収集したカスタマーボイスを商品やサービスの改善に活かすことで、顧客満足度の向上や顧客維持率の改善につながります。

eコマースの顧客維持率を向上させる8つの方法
- ターゲット顧客を明確にする
- 顧客データを一元管理する
- パーソナライズされた商品提案を行う
- ロイヤルティプログラムを導入する
- 顧客サポートを強化する
- ブランドロイヤルティを高める
- 商品を継続利用しやすい仕組みをつくる
- サブスクリプションの離脱防止対策を行う
1. ターゲット顧客を明確にする
商品やサービスの価値を十分に感じられない顧客は、リピート購入に至らない傾向にあります。そのため、顧客データを分析し、自社の商品を継続的に利用する可能性が高い顧客層を明確にすることが重要です。
たとえば、購入頻度が高い顧客やリピート購入の可能性が高い顧客層を特定し、その層に合わせた広告やキャンペーンを展開することで、顧客維持率の向上が期待できます。
2. 顧客データを一元管理する
顧客維持率を向上させるには、顧客情報を一元管理し、顧客理解を深めることが重要です。
在庫管理システムやメールマーケティングツール、CRM(顧客関係管理)などには、顧客に関するさまざまなデータが蓄積されています。これらのデータを統合することで、購入履歴や閲覧履歴、問い合わせ履歴などを横断的に把握できるようになります。
たとえば、どの商品に興味を示しているか、どのタイミングで購入しているかなどを分析することで、顧客ごとに最適な商品提案やマーケティング施策を実施できるでしょう。
3. パーソナライズされた商品提案を行う
顧客一人ひとりの興味やニーズに合わせた商品提案は、リピート購入を促進する有効なアプローチです。閲覧履歴や購入履歴を活用した商品レコメンドに加え、顧客属性に応じたコンテンツ配信を行うことで、顧客にとって関連性の高い情報をタイムリーに提供できます。
また、お気に入り商品の保存機能や過去購入商品の再注文機能、顧客ごとに最適化されたキャンペーンの配信なども、利便性や満足度の向上につながります。
大手ECモールの楽天市場やAmazon(アマゾン)では、お気に入り登録機能に加え、過去に購入した商品の再注文機能や購入を促すリマインド機能などが提供されており、継続的な購入を後押ししています。
4. ロイヤルティプログラムを導入する
ロイヤルティプログラムは、顧客との長期的な関係構築やリピート購入の促進に役立ちます。
たとえば、購入金額に応じてポイントを付与したり、シルバー、ゴールド、プラチナといった会員ランク制度を導入したりすることで、顧客は継続して利用するメリットをより強く実感できます。また、会員限定クーポンや先行販売、限定セールなどの特典を提供することで、顧客ロイヤルティの向上も期待できます。
さらに、オンラインストアと実店舗の顧客情報を統合すれば、一貫した購買体験を提供できます。顧客は購入チャネルを問わずポイントを貯めたり利用したりできるほか、企業側も購買履歴や会員情報を一元的に把握できます。
これらの情報を活用することで、過去の購入履歴に基づく商品レコメンドや会員ランクに応じた特典の案内、保有ポイントに応じたキャンペーン配信など、顧客ごとに最適化されたコミュニケーションの展開が可能になります。
5. 顧客サポートを強化する
顧客が商品を購入する前には、商品仕様や配送、返品や交換などに関する疑問を抱くことがあります。そのため、チャットサポートやFAQ(よくある質問)ページを設置し、必要な情報を迅速に提供できる体制を整えることが重要です。たとえば、Shopify Inboxのようなチャットツールを活用することで、顧客からの問い合わせへの迅速な対応が可能になります。
また、顧客に伝えている内容と実際のサービス内容にギャップを生じさせないことも重要です。たとえば、実際には提供できない機能や効果を訴求したり、確約できない配送日数を案内したりすると、顧客の期待を裏切り、満足度の低下を招く恐れがあります。そのため、商品の仕様や配送予定日、返品条件などを正確かつ明瞭に伝え、安心して購入できる環境を整えることが重要です。
6. ブランドロイヤルティを高める
顧客維持率を向上させるためには、商品や価格だけでなく、ブランドそのものへの愛着や信頼を育むことも重要です。
たとえば、自社の理念やミッションステートメント、社会貢献活動、環境への取り組みなどを発信することで、ブランドへの共感を促せます。ブランドの価値観に共感した顧客は継続的に利用する傾向があり、ブランドロイヤルティの向上につながります。
また、ブランドロイヤルティが高まることで、競合商品が登場した場合でも他社へ乗り換えにくくなり、継続購入や口コミによる新規顧客獲得も期待できます。そのため、商品やサービスの魅力だけでなく、ブランドの考え方やストーリーを発信することも重要です。
7. 商品を継続利用しやすい仕組みをつくる
顧客が商品の価値を実感できるよう支援することも重要です。商品の活用方法を紹介するコンテンツの配信や、活用事例の共有、UGC(ユーザー生成コンテンツ)の活用、利用促進キャンペーンなどを実施することで、顧客の商品利用を後押しできます。
たとえば、レビュー投稿キャンペーンや運動チャレンジなど、顧客参加型の企画を実施します。こうした取り組みによって商品の利用機会が増え、価値を実感する機会が多くなることで、継続利用や再購入につながります。
8. サブスクリプションの離脱防止対策を行う
サブスクリプションは、継続的な売上の確保や顧客維持率の向上に役立つ販売モデルです。一度申し込んだ顧客は定期的に商品を購入するため、安定した収益につながります。
一方で、顧客自身に解約の意思がなくても、クレジットカードの有効期限切れや決済エラーなどによって定期購入が停止してしまう場合があります。こうした意図しない顧客離脱を防ぐためには、決済状況を継続的に管理することが重要です。
たとえば、決済エラーが発生した際に自動で通知を送信したり、支払いの再試行を行ったりする仕組みを導入することで、継続利用の中断を防ぎやすくなります。

eコマースの顧客維持率に関する市場動向
顧客維持の重要性が高まっている
プライバシー保護の強化やサードパーティCookie(クッキー)の利用制限により、新規顧客の獲得が困難になっているため、多くのEC事業者が既存顧客との関係構築や顧客維持率の向上に注力しています。
特に、購買履歴や会員情報などのファーストパーティデータを活用し、一人ひとりに適した商品提案やキャンペーン配信を行う取り組みが広がっています。こうしたパーソナライズされた体験は、顧客満足度の向上やリピート購入の促進につながります。
また、満足度の高い顧客体験は口コミや紹介を通じて新規顧客の獲得にも貢献するため、既存顧客との関係構築や顧客維持施策は、長期的な事業成長において重要な取り組みとなっています。
コミュニティへの注目が高まっている
競合商品やサービスが次々と登場するなか、商品そのものの価値や満足度だけで長期的な顧客関係を維持することは難しくなっています。そのため、他社との差別化につながる施策としてコミュニティへの注目が高まっています。
ブランドや商品に共感する顧客と企業が継続的にコミュニケーションを取れるコミュニティを構築することで、ブランドへの愛着やロイヤルティの向上が期待でき、強固な関係構築に役立ちます。
さらに、コミュニティ内で顧客同士が疑問を解消したり情報を共有したりすることで、カスタマーサポートの負担軽減につながる場合もあります。そのため、SNSや会員限定コミュニティなどを活用し、顧客とのつながりを強化するEC事業者が増えています。
顧客維持を専門とする体制づくりが進んでいる
顧客維持率の向上に向けた取り組みは、カスタマーサポートやマーケティングだけで完結するものではありません。顧客との関係構築やコミュニティ運営、ロイヤルティ向上施策などを継続的に推進するため、顧客維持を専門に担当するチームの重要性が高まっています。
特に海外のEC業界では、既存顧客との関係構築や顧客維持を専門に担当するポジションを設ける動きが広がっています。今後は顧客獲得だけでなく、既存顧客との関係構築を重視する組織体制の重要性がさらに高まるでしょう。
Shopifyの顧客維持率向上ツール
Shopify(ショッピファイ)には、顧客維持率の向上に役立つさまざまなアプリがあります。ここでは、顧客分析やロイヤルティ施策などに活用できるアプリを紹介します。
ECPower
ECPowerは、Shopifyの顧客データを活用して顧客維持率の向上を支援する顧客分析ツールです。購入回数やリピート状況などの条件で顧客をセグメント化できるため、優良顧客へのアプローチや離脱リスクのある顧客へのフォロー施策に活用できます。
また、LTV(顧客生涯価値)やリピート率などの指標を可視化できるほか、作成した顧客セグメントをLINE配信やメールマーケティングなどの施策に活用できる点も特徴です。顧客データを活用しながら、一人ひとりに合わせたコミュニケーションを実施できます。
CRM PLUS on LINE
CRM PLUS on LINEは、ShopifyとLINE(ライン)を連携し、顧客との継続的なコミュニケーションを支援するCRMアプリです。顧客情報や購買データを活用したメッセージ配信に対応しており、お礼メッセージや発送通知、カゴ落ち通知、再入荷通知などをLINE上で配信できます。
また、LINEのデジタル会員証機能も利用できるため、ポイント制度や会員ランク制度と組み合わせたロイヤルティ施策にも活用可能です。日本ではLINEの利用率が高く、顧客との継続的な接点づくりやリピート購入の促進に役立ちます。
GO SUB
GO SUBは、Shopify向けの定期購入アプリです。定期購入商品の販売や契約管理に対応しているほか、クレジットカード決済失敗時の通知機能も利用できます。
サブスクリプションでは、カードの有効期限切れや利用限度額超過などが原因で決済が失敗し、顧客自身に解約の意思がないにもかかわらず契約が停止してしまうことがあります。GO SUBでは、こうした決済トラブル発生時に顧客へ通知を送信し、決済情報の更新を促すことが可能です。
意図しないサブスクリプションの解約や離脱を抑制できるため、継続課金モデルを導入しているECサイトの顧客維持率向上に役立ちます。
BON Loyalty
BON Loyaltyは、ポイント制度や会員ランク制度を構築できる顧客ロイヤルティアプリです。購入金額に応じたポイント付与や会員ランクの設定、紹介プログラムの運用などを通じて、顧客の継続利用やリピート購入を促進できます。
また、会員限定特典や送料無料特典、クーポン配布などにも対応しており、顧客ロイヤルティの向上に有効です。Shopify POSとも連携できるため、オンラインストアと実店舗を横断したポイント運用にも対応しています。
まとめ
eコマースの顧客維持率は、既存顧客との関係を維持し、安定した売上やCLVの向上につなげるための重要な指標です。新規顧客の獲得コストが上昇しているなか、既存顧客との関係構築やリピート購入の促進は、EC事業の成長に欠かせない取り組みとなっています。
顧客維持率を高めるためには、スムーズな購買体験の提供やパーソナライズされた商品提案、ロイヤルティプログラムの導入、顧客サポートの充実などを通じて、顧客満足度を継続的に高めることが重要です。また、顧客コミュニティの形成やサブスクリプションの離脱防止対策なども、長期的な関係構築に役立ちます。
さらに、顧客データを活用して購買行動やニーズの変化を把握し、継続的に施策を改善することも欠かせません。顧客維持率やCLV、リピート率などの指標を定期的に分析しながら、自社に合った施策を実践し、持続的な成長につなげていきましょう。
eコマースの顧客維持率に関するよくある質問
リテンションレートとは?
リテンションレートとは顧客維持率のことで、一定期間内に既存顧客が継続して商品やサービスを利用した割合を示す指標です。顧客との関係性や顧客満足度を把握するために活用されます。
eコマースで顧客維持率70%は高い?
eコマースでの顧客維持率70%は、非常に高い水準といえます。既存顧客の7割以上が継続して利用している状態であり、一般的な業界平均を大きく上回るでしょう。
顧客維持率とリピート率の違いは?
顧客維持率は、一定期間内に離脱せず継続利用している顧客の割合を示す指標です。一方、リピート率は全購入者のうち、2回以上購入した顧客の割合を示します。




