経済産業省の調査によると、日本のキャッシュレス決済比率は2026年3月末時点で58%まで上昇しており、なかでも二次元コードなどのスマホ決済の利用が伸びています。
そのため、自店にスマホ決済を取り入れるべきか検討するEC事業者が増えていますが、「種類が多くて違いがわからない」「導入費用や手数料が不安」という声も少なくありません。
この記事では、スマホ決済の種類や支払いの仕組みといった概要から、事業者が導入することで得られるメリット、導入前に確認したい注意点、具体的な導入方法までわかりやすく解説します。自店に合ったスマホ決済を選ぶために、ぜひ本記事を参考にしてください。
スマホ決済とは
スマホ決済とは、スマートフォンを使って支払いを完結できる、キャッシュレス決済の一種です。「モバイル決済」とほぼ同じ意味で使われます。
スマホ決済では、クレジットカードや銀行口座をスマホ内のデジタルウォレットにひも付けておくことで、現金やカードを取り出さずに支払いができます。こうした手軽さから利用者が増え、事業者にとっても対応を検討したい決済手段になりつつあります。
スマホ決済の種類
スマホ決済は、支払い時の読み取り方法によって大きく3種類に分けられます。
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二次元コード決済:
スマホに表示したコードを店舗側が読み取るか、店頭のコードを利用者が読み取って支払う方式です。PayPay(ペイペイ)、楽天ペイ、d払い、メルペイなどがスマホ決済の代表的なサービスで、ポイント還元やキャンペーンが豊富な点が特徴です。 -
非接触IC決済:
専用端末にスマホをかざすだけで支払いが完了する方式です。「Tap to Pay(タップトゥーペイ)」とも呼ばれ、アプリを起動する必要がなくスピーディーに会計ができるのがメリットです。Apple Pay(アップルペイ)やモバイルSuica(スイカ)が代表例です。 -
キャリア決済:
携帯電話の通信料金とまとめて支払う方式です。クレジットカードがなくても利用でき、auかんたん決済、ソフトバンクまとめて支払いなどがあります。
二次元コード決済は実店舗とネットショップの両方で普及しており、非接触IC決済は主にスピーディーな会計が求められる実店舗で、キャリア決済は主にネットショップやデジタルコンテンツの購入で利用されています。
スマホ決済の支払いタイミング
スマホ決済は読み取り方法だけでなく、支払いが発生するタイミングによっても分類できます。決済のタイミングは3種類あり、「前払い」「即時払い」「後払い」に分けられます。
プリペイド
プリペイドは、あらかじめ銀行口座などから残高をチャージしておき、その範囲内で支払う方式です。事業者にとっては、残高内での支払いのため未払いが発生しにくいメリットがあります。
即時払い
即時払いは、支払いと同時にひも付けされている銀行口座から代金が引き落とされる方式です。デビットカードに近い仕組みで、リアルタイムペイとも呼ばれます。利用者の口座残高の範囲内でしか決済されないため、代金を回収できなくなるリスクが少ない支払い方法です。
後払い
後払いは、クレジットカードと同様に、利用した分を後日まとめて支払う方式です。ポストペイとも呼ばれ、手元の残高を気にせず使える手軽さから利用者に好まれます。与信や回収は決済事業者が担うため、事業者が直接未払いリスクを負うことは基本的にありません。
スマホ決済を導入するメリット
未払いや現金管理のリスクを減らせる
前払いや即時払いのスマホ決済は、残高や口座の範囲内で支払われるため、代金を回収できない未払いのリスクを抑えられます。後払いの場合も、回収は決済事業者が担うため、事業者が未回収による損失を負うことは基本的にありません。
また、実店舗では現金の取り扱いが減ることで、レジ締めや売上金の管理、銀行への入金といった現金管理の手間やコストも減らせます。盗難や紛失のリスクが下がる点も、店舗を運営するうえでの安心材料となるでしょう。
レジ業務を効率化できる
スマホ決済は利用者が端末にスマホをかざす、あるいはコードを読み取るだけで支払いが完了します。現金の受け渡しや釣り銭の計算が不要になるため、1件あたりの会計時間を短縮できます。
実店舗ではレジの混雑緩和につながり、釣り銭の渡し間違いといった人的ミスも減らせます。ネットショップでも、決済が自動で記録されるため、売上の集計や照合の手間を減らせます。
会計がスムーズになることで、従業員はレジ対応や確認作業に追われる時間を減らし、接客や商品管理など、他の業務に時間を回せるようになります。
ネットショップのカゴ落ちを防げる
スマホ決済を会計ページに組み込めば、普段使い慣れた決済手段で支払えるうえ、カード番号などの入力負担を減らせるため、会計の途中で購入をやめてしまうカゴ落ちを防げます。
経済産業省の「令和5年度 電子商取引に関する市場調査」によると、物販系ECの約58.7%がすでにスマートフォン経由となっており、スマホでの会計のしやすさが売上を左右する状況です。
また、SBペイメントサービスの調査によると、ECサイトによく利用する決済手段がない場合、55%以上がそのECサイトでは購入せず離脱する傾向があるとされています。同社の導入事例では、スマートフォン利用者の中にクレジットカード番号や口座情報の入力を面倒に感じる声があることも紹介されており、「使いたい決済手段がない」「入力が面倒」という2つの障壁がカゴ落ちの主な原因といえます。
スマホ決済は、この2つの障壁をまとめて取り除ける手段です。配送先情報や顧客情報を保存できる決済機能と組み合わせれば、住所入力やアカウント登録の手間も減らしやすくなります。
実際にShopify(ショッピファイ)が2020年に行った調査では、ワンクリック決済のShop Pay(ショップペイ)を使った会計は、通常の会計に比べてコンバージョン率が1.91倍だったと報告されています。
新規顧客の獲得につながる
スマホ決済に対応しておくと、現金やクレジットカードをあまり使わない層を取り込めます。特に、スマホでの支払いに慣れたZ世代などの若い世代は、財布を持たずスマホだけで出かける人も増えており、対応していないことが機会損失につながる場面も少なくありません。決済手段を増やすことは、これまで取りこぼしていた顧客層へのアプローチになり、顧客獲得へとつながります。
実店舗を運営している場合は、訪日外国人観光客への対応という観点もあります。海外で広く使われている二次元コード決済に対応しておけば、現金や日本で使えるクレジットカードを持たない旅行客にも商品を購入してもらえるようになります。
スマホ決済を導入する際の注意点
決済手数料がかかる
スマホ決済を導入すると、売上に対して数%程度の決済手数料がかかります。手数料率はサービスや契約内容によって異なり、利用が増えるほど手数料の総額も大きくなります。
導入前に自店の客単価や決済件数をもとに、手数料がどの程度の負担になるかを試算しておくことが大切です。サービスや契約プラン、時期によっては、手数料などが優遇されるキャンペーンが実施されていることもあります。申し込み前に、公式サイトで最新の条件を確認しましょう。
入金まで時間がかかる
スマホ決済の代金は、その場で店舗に入るわけではなく、決済事業者を経由して後日まとめて入金されます。入金のタイミングはサービスによって異なり、翌営業日のものもあれば、月に1~6回というものもあります。
入金サイクルが長いと、手元の資金が不足しやすくなり、キャッシュフローに影響することがあります。そのため、仕入れの支払いが先行する事業では、入金サイクルや最低入金額の条件を事前に確認しておきましょう。
端末の準備や契約に手間がかかる
実店舗で非接触IC決済などに対応するには、専用の決済端末や対応スマホを用意する必要があります。端末の購入やレンタルにコストがかかる場合があり、設定作業も必要になります。
さらに、複数のスマホ決済に個別で対応しようとすると、それぞれで契約や管理が必要になり、運用の負担が大きくなります。決済代行会社を使えば、複数のスマホ決済との契約や管理を一本化できます。
スマホ決済サービスの選び方
利用者数で選ぶ
利用者の多いサービスほど、自店の顧客が普段から使っている可能性が高くなります。多くの顧客の支払いに対応できれば、それだけ販売機会の取りこぼしを防げます。まずは利用者数の多い主要なサービスから検討するとよいでしょう。
また、利用者の多いサービスはポイント還元キャンペーンが活発な傾向があり、「ポイントが貯まる店で買いたい」という理由で選ばれやすい点も強みです。
利用者数を比較する際は、公式発表の登録ユーザー数だけでなく、業界調査の利用シェアも参考になります。登録ユーザー数は、実際にどれだけ使われているかまでは反映しないためです。たとえば2025年に行われたMMD研究所の調査では、二次元コード決済の利用者が現在使っているサービスとして、PayPayが65.2%、楽天ペイが35.9%、d払いが28.2%となっています。
コストで選ぶ
導入や運用にかかるコスト、特に決済手数料は利益率に影響するため、そういった費用を考慮したうえで、最適なサービスを選びましょう。サービスごとに手数料や入金サイクルが異なるため、顧客単価や決済件数に照らして負担を比較します。手数料が低くても入金サイクルが長いなど、ひとつの条件だけでは優劣を判断できないため、総合的に判断することが大切です。
比較の際は決済手数料だけでなく、入金時の振込手数料や月額費用の有無も含めた総コストで考えましょう。導入キャンペーンで一定期間手数料が無料になるサービスもありますが、その場合はキャンペーン終了後の通常料金まで確認しておく必要があります。
顧客層との相性で選ぶ
自店の顧客層がよく使う決済手段を選ぶことも重要です。若年層が多いなら二次元コード決済、交通系をよく使う層が多いなら非接触IC決済というように、顧客のニーズに合うサービスを優先すると利用されやすくなります。実店舗とネットショップでは利用されやすい決済方法が異なる場合もあるため、販売チャネルごとに分けて考えると選びやすくなります。
顧客層がつかみきれない場合は、問い合わせで尋ねられることが多い支払い方法や、競合店が対応しているサービスを参考にする方法もあります。実際の要望から逆算して選べば、導入したのに使われないというミスマッチを防ぎやすくなります。
セキュリティ対策で選ぶ
スマホ決済では顧客の決済情報や個人情報を扱うため、サービス自体の安全性も選定基準になります。決済データの暗号化や不正利用を検知する仕組み、本人認証の方式などは、各サービスの公式サイトで確認できます。
クレジットカード情報を扱うサービスであれば、カード業界の国際セキュリティ基準「PCI DSS」に準拠しているかどうかも判断の目安になります。万が一情報漏えいが起きると、顧客に被害が及ぶだけでなく店舗の信頼にも関わるため、セキュリティ面は契約前に確認しておきましょう。
サポート体制で選ぶ
トラブル時の対応や問い合わせ窓口の充実度も、大切な比較ポイントです。不正利用が起きた際の補償や、サポートの対応時間、利用通知の有無などを事前に確認しておくと、導入後も安心してサービスを活用できるでしょう。
特に、決済が使えない状態が続くと、その間の販売機会を失ってしまいます。夜間や週末も営業する店舗には、問い合わせ窓口の対応時間が自店の営業時間をカバーしているサービスが向いています。
初期設定を自分でできるか不安な場合は、導入時のサポートを受けられるかどうかもあわせて確認しておきましょう。
スマホ決済の導入方法
スマホ決済の導入方法は、大きく分けて2つあります。各決済サービスと個別に契約する方法と、決済代行会社を通じてまとめて導入する方法です。
個別契約は、利用したいサービスを絞っている場合に向いています。ただし、サービスごとに申し込みや審査、入金サイクルの確認が必要になります。
一方、決済代行会社を使うと、複数の決済手段をまとめて導入しやすくなります。個別契約に比べてサービス利用料などが上乗せされる場合もありますが、手続きや管理の負担を減らせる点がメリットです。
どちらの方法でも、導入までの流れは「申し込み→審査→初期設定」となっているケースが一般的です。申し込み後は、店舗情報や取扱商材についての審査が行われます。審査期間はサービスや決済ブランド、申し込み内容によって異なるため、セールやキャンペーンなど利用開始のタイミングが決まっている場合は、逆算して余裕を持って申し込みましょう。審査を通過したら、アプリや管理画面、必要な機器を設定し、テスト決済で問題なく動作することを確認してから運用を始めると安心です。
初期設定の方法は、販売チャネルによって異なります。ネットショップの場合は、利用しているECプラットフォームが対応している決済サービスを確認し、管理画面から設定します。実店舗では、店頭に掲示したQRコードを読み取ってもらう方法のほか、スマホやタブレットとカードリーダーを使って決済を受け付ける方法があります。また、iPhoneのタッチ決済に対応したサービスであれば、追加のカードリーダーなしで、クレジットカードやデジタルウォレットのタッチ決済を受けることも可能です。
まとめ
スマホ決済とは、主に二次元コード決済、非接触IC決済、キャリア決済の3種類があるキャッシュレス決済で、EC事業者にとってはレジ業務の効率化や新規顧客の獲得、カゴ落ち防止といったメリットがあります。一方で、手数料や入金までの期間、端末の準備といった注意点もあるため、自店の状況に合わせて選ぶことが大切です。
ネットショップにスマホ決済を取り入れるなら、ECプラットフォームのShopifyがおすすめです。ワンクリック決済のShop Payをはじめ、会計をスムーズにしてカゴ落ちを防ぐ機能がそろっており、SEOやメール、SNSを使った集客にも対応しています。無料体験も実施していますので、ぜひ一度お試しください。
スマホ決済に関するよくある質問
スマホ決済の利用率は?
MMD研究所の2025年7月調査によると、二次元コード決済などのスマホ決済を利用している人の割合は73.6%でした。普段利用している支払い方法でも、二次元コード決済は46.7%となっており、すでに多くの消費者に使われている決済方法といえます。
スマホ決済の導入にかかる費用は?
スマホ決済の導入にかかる主な費用は、売上に応じて発生する決済手数料で、主要サービスで1%台後半〜3%台前半がひとつの目安です。初期費用や月額費用が0円のサービスもあります。ただし、サービスやプラン、入金方法によっては端末費用や振込手数料がかかる場合もあるため、導入前に公式サイトで最新の料金を確認しましょう。
スマホ決済でよくある失敗は?
ネットショップにスマホ決済を取り入れる際、会計まわりで次の失敗が起こりがちです。
- 会計ページでカード番号の手入力のみを求める設計になっている
- 入力項目が多く、会計ページが長い
- アカウント登録を必須にし、ゲスト購入を用意しない
- 送料や手数料が会計の直前までわからない
- 顧客情報を保存できず、再購入のたびに入力させる












