製品流通は、ビジネスと顧客をつなぐ重要な架け橋です。扱う品が花瓶でもスニーカーでも、製品を適切なオーディエンスに届けるための仕組みです。起業家がEC事業に惹かれるのは、比較的シンプルな運営で顧客と直接つながることができるからです。とはいえ、製品流通の世界には小売パートナーシップ、卸売販売、サードパーティのマーケットプレイスとの連携など、ビジネスの展開を加速させる多様な機会が存在します。
中華調味料ブランド「Fly By Jing」の成功例を見てみましょう。創業者のJing Gaoが立ち上げたこのブランドは、Shopifyストアを通じたD2C販売(消費者直販)と、アメリカ全土のレストランに辛味ソースを展開する戦略的パートナーシップを巧みに組み合わせています。さらに、TargetやVonsといった大手小売店の棚にも商品を並べることに成功しました。オンライン販売と実店舗展開を融合させたこのハイブリッドアプローチは、ビジネスの成長を支える柔軟な製品流通戦略の好例です。
製品流通の種類と、ビジネスの成長につながる流通パートナーの選び方について見ていきましょう。
製品流通とは
製品流通とは、商品を小売店や消費者に届け、購入できるようにするまでのプロセスです。輸送、保管、配送といった一連の流れが含まれます。流通を最適化するには、物流パートナーや在庫管理システムを評価し、必要な商品を適切なタイミングで効率よく届けられる体制を整えることが重要です。
適切な製品流通戦略を構築することで、コストを抑えながらスピーディーに、顧客の購入方法やニーズに合った形で商品を届けることができます。
流通戦略の種類
ここでは、検討すべき3つの流通戦略を紹介します。
開放的流通
開放的流通は、できるだけ多くの販売チャネルを通じて、商品を幅広く販売する手法です。たとえば、新発売のマンゴー風味ナチュラルエナジードリンクを、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、自動販売機など、街のさまざまな場所で販売するケースが該当します。
このアプローチは、消費者が日常的に購入する低価格商品に適しています。スナック菓子、日用品、清掃用品、オフィス用品などが代表例です。
選択的流通
選択的流通は、商品の販売先を限定する戦略です。販売範囲は狭くなるものの、ブランドイメージや顧客体験をより細かくコントロールできます。この戦略は、他の商品との差別化が図られた中価格帯の商品によく用いられます。
たとえば、スキンケアブランドが自社ウェブサイト、高級百貨店、Sephoraのような厳選した化粧品専門店を通じて美容液や日焼け止めを販売するケースが挙げられます。販売先をある程度限定しながらも、ターゲット市場にリーチできる手法です。
排他的流通
排他的流通は、特定の小売業者または流通業者1社だけに商品の販売権を与える方法です。この手法は一般的に高級品や専門商品に用いられ、希少性や高級感を高める効果があります。また、価格設定やブランディング、カスタマーサービスを厳密に管理できるのも特徴です。
たとえば、パテック・フィリップのような高級時計メーカーは、主要都市ごとに1つの正規販売店のみに時計の販売を許可し、こだわりを持つ顧客に特別な購入体験を提供しています。
直接流通チャネルと間接流通チャネルの違い
直接流通と間接流通のどちらを選ぶかによって、企業と顧客の関係性は大きく変わります。メーカーが顧客に直接販売する直接流通では、顧客と密接な関係を築き、その反応をすばやく把握できます。一方、仲介業者を通じて販売する間接流通では、より幅広い顧客に商品を届けることができます。
D2Cの専門家であり、起業家、TikTokパーソナリティでもあるAshwinn Krishnaswamy氏は、自社に適した流通戦略を選ぶ難しさについて、次のようにアドバイスしています。
「D2Cでは、顧客を獲得するのは簡単ではありません。だからといって、小売に進出すれば問題が解決するわけでもありません。市場は広がりますが、今度は同じくらい難しい別の課題に直面します」
どのビジネスにも当てはまる万能な流通戦略はありません。どの方法にも、それぞれメリットとデメリットがあります。
直接流通チャネル
直接流通チャネルとは、メーカーが仲介者を介さず、消費者に直接商品を販売する方法です。これにより、企業は販売プロセス、価格設定、顧客体験を自社で管理できます。このアプローチは利益率を高められる可能性がある一方、顧客に直接販売するための体制を整える必要があり、インフラや人員などへの初期投資が大きくなる場合があります。
具体的には、次のような例があります。
- 自社の実店舗を運営するリネン・寝具ブランド
- 自社ECサイトで、遊び心のあるジャーナルやプランナーを販売する文房具ブランド
- サブスクリプション型のチーズボックスを顧客の自宅に直接配送する地元の酪農場
間接流通チャネル
間接流通チャネルでは、メーカーと顧客の間に1つ(または複数)の仲介業者が入ります。この戦略により、ブランドはより幅広い顧客にリーチできるほか、流通を専門とする業者の知見も活用できます。
一方で、デメリットもあります。たとえば、顧客と直接やり取りする機会が減るほか、仲介業者に支払うコストによって利益率が低下する可能性があります。その反面、間接流通戦略には、運営コストやリスクを抑えられるというメリットもあります。Shopifyマーチャントなら、他のShopify小売業者とつながることで、物流の負担を増やすことなく販路を広げることができます。
具体的には、次のような例があります。
- 地元の酒店やスーパーマーケットを通じてIPAを販売するクラフトビール醸造所
- 高級食料品店に商品を展開するために、専門食品流通業者と提携するグルメスナックブランド
- Amazonなどのオンライン小売業者を通じて書籍を販売する児童書作家
流通パートナー選びのポイント
適切な流通パートナーと組むことで、自社だけでは難しい事業成長を実現できる可能性があります。パートナーのマーケティング予算や売り場、販売促進のノウハウを活用して、ターゲット顧客に商品を届けることができます。ここでは、流通パートナーを選ぶ際のポイントを紹介します。
市場知識と専門性
適切な流通パートナーは、自社では気づかなかった課題や新たなビジネスチャンスを見つける手助けをしてくれます。他のブランドとの協業経験を生かし、販路を拡大する際に陥りがちな失敗を避けるためのサポートも期待できます。
たとえば、ニッチなオーガニック食品ブランドが一般的なスーパーマーケットへの販路拡大を目指す場合は、その分野で実績のある流通業者を探しましょう。地元のシューズブティックがオンラインで全国展開を目指すなら、Eコマースでブランドを成長させた経験が豊富なパートナーが適しています。候補となるパートナーとの最初の話し合いで、消費者行動や関連する規制、同じ商品カテゴリーの競争状況について、自社では得られなかった知見を提供してくれるなら、事業成長を支えてくれるパートナーとして期待できるでしょう。
業界での評判と信頼性
流通業者の評判が悪ければ、自社ブランドのイメージにも悪影響が及ぶ可能性があります。注意したいのは、配送遅延を繰り返している、商品の取り扱いに問題がある、小売業者との関係が良好でないといったケースです。パートナーシップを結ぶ前に、十分なリサーチを行いましょう。業界フォーラムや報道記事、ソーシャルメディアでの評判などを確認し、その流通業者が業界でどのように評価されているかを把握します。また、すでに取引しているブランドや納品先の小売業者に話を聞き、実績や信頼性について直接確認するのも有効です。
拡張性と成長の可能性
取引先の事業拡大を支えてきた実績のあるパートナーを探しましょう。インフラ、テクノロジー、チーム体制を確認し、自社ブランドの成長に伴って取引量が増えても対応できるかを見極めます。ただし、規模が大きいという理由だけで大手流通業者を優先し、小規模な業者を候補から外す必要はありません。大手企業の場合、成長途上のブランドには十分なサポートが行き届かないこともあります。むしろ、自社とともに成長していく意欲のある中小規模の流通業者も検討してみましょう。
目立った実績がまだない場合は、自社の商品やビジョンに強い関心を示してくれるパートナーにも注目しましょう。また、相手の長期的な成長計画が自社の方向性と合っているかも、しっかり確認することが大切です。
非排他的パートナーシップ
一部の流通業者は、手厚いサポートや有利な条件と引き換えに、独占契約を求めることがあります。しかし、成長中の企業にとって、1社のパートナーだけに依存することは、メリット以上に大きなリスクを伴う可能性があります。独占契約を結ぶことで、ほかの市場への進出や、収益につながる新たな機会が制限されることもあります。
契約書にサインする前に、独占契約に関する条項が含まれていないか、契約内容をよく確認しましょう。「独占流通業者」「排他的権利」「競業避止」「地理的制限」といった文言には特に注意が必要です。さらに、消費者への直接販売や、ほかの製品流通チャネルを利用する権利が確保されているかも確認しましょう。
対応地域と市場への浸透度
単一地域での流通をマスターすることは困難だが、その成功を異なる市場で再現することはさらに複雑1つの地域で流通を軌道に乗せるだけでも簡単ではありませんが、同じ成功を別の市場で再現するのはさらに難しくなります。消費者の嗜好や文化、規制環境は地域によって異なるため、北海道で成功した方法が九州でも通用するとは限らず、海外となればなおさらです。それでも、新しい地域への進出は、事業成長を加速させる大きなチャンスとなります。
そこで力になるのが、現地市場に関する知識と既存のネットワークを持つ、経験豊富な流通パートナーです。類似するブランドの地域展開を支援した経験があり、新しい市場に進出してもブランドイメージを維持できるパートナーを探しましょう。
物流能力
流通業者と提携する大きなメリットの1つが、物流面での強みを活用できることです。倉庫、輸送ネットワーク、在庫管理システムなどの整備されたインフラを活用することで、取引量が大幅に増えても対応しやすくなります。パートナーを評価する際は、高度な追跡システムや戦略的に配置された配送センターなど、物流体制がどの程度整っているかを確認しましょう。
物流能力を確かめる方法として、実際に顧客として商品を注文してみるのもおすすめです。チェックアウトから商品が自宅に届くまで、注文処理の一連の流れを確認してみましょう。
自社と連携できるテクノロジー
システム同士をスムーズに連携できるかどうかも、パートナー選びの重要なポイントです。流通業者が使用しているシステムやツールが、自社のものと連携できるかを確認しましょう。システム間でどのようにデータを共有できるのか、在庫管理や注文処理などの業務をどのように連携して行うのかも確認しておくことが大切です。
価値観とビジョンの一致
流通は単なる物流の問題ではありません。商品がどのように顧客のもとへ届けられるかも、ブランドの印象を左右します。商品そのものだけでなく、販売や配送のあり方もブランドアイデンティティを形づくる要素の1つです。ブランドに対する良いイメージを維持するためにも、自社の理念や価値観と、流通パートナーの方針が合っているかを確認しましょう。
環境に優しい歯磨きタブレットブランドBiteの創業者Lindsay McCormick氏は、当初D2Cブランドとしてビジネスを立ち上げましたが、ブランドに合った専門小売店と提携することで販路を拡大しました。
McCormick氏は、Shopify Mastersポッドキャストでこう語っています。「ErewhonやCredoと提携した理由の1つは、スタッフの教育に力を入れていることです。スタッフは自分たちが販売する商品を心から気に入っていて、その背景にあるストーリーを顧客に伝えてくれます。ガラス瓶に入った歯磨きタブレットのような商品を販売するには、それが大切なのです」
事業の進め方や価値観が自社と合うパートナーを探しましょう。重要なのは、単に商品を効率よく届けてくれるだけではありません。自社が顧客に提供したい体験を理解し、その実現を後押ししてくれるパートナーを選ぶことが大切です。
製品流通に関するよくある質問
製品流通の例にはどのようなものがありますか?
たとえば、人気のスニーカーブランドが、自社の旗艦店、大手スポーツ用品チェーン、厳選されたブティックなど、複数の販売チャネルを通じて最新モデルを販売し、スニーカーファンから一般の買い物客まで幅広い顧客に商品を届けるケースが挙げられます。
製品流通はなぜ重要なのですか?
製品流通は、顧客が商品を見つけ、購入しやすい環境を整えるうえで重要であり、売上やブランドの成長にも直接影響します。
製品流通業者とは何ですか?
製品流通業者とは、メーカーから商品を仕入れて倉庫に保管し、小売業者や、場合によっては消費者に直接販売・配送する仲介業者です。たとえば、スポーツドリンクの流通業者なら、メーカーからチェリーライム風味のドリンクをケース単位で仕入れて倉庫に保管し、担当エリア内の食料品店やサプリメント店に販売・配送します。




