近年の消費者行動は、ECサイトで下調べを行ってから、SNSで口コミを探し、さらに店舗で実際に手に取ってみて購入するなど、複数のチャネルをまたぐのも当たり前になりました。これにより顧客とのコミュニケーションやデータがチャネルごとに分断され、購入直後に同じ商品の割引メールが届くなど、顧客体験を損なう場面も生まれやすくなっています。
そこでこの記事では、顧客との多様な接点を連動させるオムニチャネル戦略における、パーソナライゼーションの重要性や戦略、具体的な実現方法について解説します。

オムニチャネルのパーソナライゼーションとは
オムニチャネルのパーソナライゼーションとは、オンラインストア、実店舗、モバイルアプリ、SNSなどのどのチャネルが接点になった場合でも一貫して、顧客一人ひとりに最適化された情報や体験を提供するマーケティング手法です。オムニチャネルはあらゆる顧客接点がシームレスにつながるようにすることを指し、パーソナライゼーションは顧客の購入履歴や興味・関心に応じて情報やコンテンツを提供する手法です。
これらの考え方を組み合わせたオムニチャネルパーソナライゼーションでは、例えばECサイトで購入した後に登録したアプリでも、発送状況を確認できたり関連商品のレコメンドが表示されたりすることで、顧客がその場その時に最適なチャネルを自然に選べるようになります。重要なのは、単にすべてのチャネルで同じメッセージを発信するだけでなく、あるチャネルでの顧客の行動が、別のチャネルにもシームレスに反映される状態です。

オムニチャネルのパーソナライゼーションが重要な理由
パーソナライズへの期待に関するマクロミルの調査では、小売業/モール型ECサービスで「自分に合った情報やおすすめを受け取りたいか」という設問に、消費者の61.0%が「そう思う」「ややそう思う」と回答しています。また同調査では、自分に合った提案を受けることで「新たな商品やサービスを知るきっかけ」「興味・関心を持つようになった」と感じる傾向も見られ、クロスセルやブランドロイヤルティの向上には特に、パーソナライズドマーケティングが効果的であることがわかります。
一方で、顧客との接点になるチャネルが多様化し、複数のチャネルを行き来しながら利用するケースも増えている現在、消費者の期待するパーソナライゼーションの実現は難しくなりつつあります。チャネルごとにデータが分断された状態では、顧客のニーズや行動を正しく把握できず、的外れなアプローチになってしまう可能性が高いためです。満足度や顧客生涯価値を高めるには、どのチャネルでも一貫した顧客関係を維持していくようなオムニチャネルの視点が不可欠となります。

オムニチャネルパーソナライゼーションを始めるための3つのステップ
1. カスタマージャーニーを理解する
顧客が自社商品やブランドを認知し、ウェブサイトやSNSなどにアクセスし、商品の購入に到達するまでの過程を、チャネル横断のカスタマージャーニーマップとして可視化します。顧客が頻繁に使用するチャネルがどれか、どのチャネルでどのような行動をとっているかを理解し、どこに課題やコンバージョンの機会があるのか分析しましょう。
2. 明確な目標を設定し、関係者との連携を図る
パーソナライゼーション戦略の具体的な目標を設定し、関係者に共有して連携を図ります。顧客獲得単価(CAC)の削減やコンバージョン率向上、客単価の向上など、誰にとっても理解しやすい明確なゴールを定めることで、施策の優先順位の判断がしやすくなります。また、関係者すべてが1つの目標に向かって取り組める体制を確立することも重要です。
3. 統合された顧客データ基盤を構築する
顧客データの統合は、オムニチャネルパーソナライゼーション戦略の最も重要な要素です。オンラインストアの閲覧や購買履歴、実店舗での購入、SNSでの「いいね」、メールマガジンの開封率といった、すべてのチャネルから得られる情報を集約して一つの顧客プロファイルに統合できるシステムを選定し、データ基盤を構築しましょう。
例えばECプラットフォームのShopify(ショッピファイ)は各チャネルで取得したデータの統合に標準機能で対応しており、SNSやAmazon(アマゾン)、楽天などのECモールとも連携できるため、オムニチャネルパーソナライゼーションには最適です。

オムニチャネルパーソナライゼーションに不可欠な7つの要素
- 顧客データの統合基盤
- ゼロパーティデータの収集
- マーケティングオートメーションの活用
- チャネルごとの最適化
- カスタマージャーニー全体をつなげた分析
- オムニチャネル対応の注文システム
- 組織横断での運用体制
1. 顧客データの統合基盤
オムニチャネルパーソナライゼーションを実行するには、さまざまなチャネルから収集されるデータを顧客単位で統合し、一元管理できるシステムが必要となります。そこに含まれるデータは、ウェブサイト上での行動データや会員情報、実店舗への来店履歴など、従来の用途や形式がバラバラのため、新たなシステムを構築する必要があるかもしれません。こうしたシステムは、CDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)とも呼ばれています。
2. ゼロパーティデータの収集
自社で収集可能なデータには、購入履歴やクリック率など直接的に収集可能なファーストパーティデータと、顧客が自らの意思で企業に提供してくれる好みや趣味、関心などのゼロパーティデータがあります。パーソナライゼーションには、ゼロパーティデータが特に重要になってきます。
ゼロパーティデータを収集するには、主にウェブアンケートや購入後のフィードバック、カスタマーサポートでのやり取り、診断コンテンツのような方法があります。信頼を維持するために、「最適な商品の提案のため」など、データを提供するメリットを提示してデータを収集しましょう。
3. マーケティングオートメーションの活用
多数の顧客を対象にしながら、一人ひとりに最適なコンテンツを配信するといった取り組みは、現実的に手作業で行うことができません。最適なタイミングで情報を届けるリアルタイムパーソナライゼーションを実現するには、マーケティングオートメーションを活用しましょう。
このツールの導入で、顧客の個人情報と行動などのデータをまとめて管理し、カゴ落ち・メール開封などの顧客行動の把握や、記念日に合わせたメール配信の自動化、キャンペーン効果の測定・分析などが可能となります。
4. チャネルごとの最適化
ECサイト
ECサイトにおけるパーソナライゼーションの具体例としては、顧客の過去の閲覧履歴や購買データに基づいた商品レコメンド表示、バナーの表示変更、居住地に合わせた実店舗のイベント情報表示、属性が近い顧客によるカスタマーボイスの紹介などが挙げられます。
アプリ
アプリは会員証、在庫検索、予約、レビュー閲覧、来店促進などの機能により、オンラインとオフラインをつなぐ重要な役割を持ちます。スマートフォンは常に手元にあるため、継続的に顧客エンゲージメントを深める接点として最適で、必要な時にすぐ問い合わせができる動線や、自分に合った商品をすぐに見つけるためのカスタマイズ機能などを盛り込むと効果的です。
実店舗
顧客にアプリの会員証を提示してもらうことで、店舗側でもユーザーの属性情報やコミュニケーション履歴、購入履歴などを確認でき、他のチャネルと一貫性のある接客が可能です。アプリをその場でインストールして会員登録を行ったユーザーにポイントを付与するなど、アプリの利用促進施策を展開しましょう。
SNS
SNSはユーザーと直接コミュニケーションを取れるツールのため、顧客接点として重要です。自社の公式や、ブランド別、スタッフ配信用など、複数のアカウントを作成しておくと、顧客自身が必要に応じてチャネルを選びやすくなります。
ウェブ広告
ウェブ広告のパーソナライゼーション手法としては、リターゲティングが効果的です。自社サイトへアクセスしたり、SNSアカウントをフォローしたことがあるユーザーへ広告を表示する方法です。すでに接点のあるユーザーのため、興味を持ってもらいやすい見込み顧客となります。
5. カスタマージャーニー全体をつなげた分析
例えば、顧客がSNS広告で商品を認知してサイトを訪問し、メルマガに登録したのち最終的に実店舗で購入した場合、どのチャネルの施策が効果的だったのか分析しづらくなります。実際には広告やメールのパーソナライゼーションが決め手だったかもしれませんが、最終的な接点である店舗での実績しか把握できない可能性があります。
カスタマージャーニーのどの部分が有効だったか、どの部分の機能を改善できるかを解明するには、コンバージョンに至るまでに発生した接点をつなげて計測するアトリビューション分析を行う必要があります。
6. オムニチャネル対応の注文システム
オムニチャネル対応の注文システムを整備することで、ECサイトで注文した商品を実店舗で受け取れたり、実店舗で在庫がなかった商品をその場からECサイトで注文するなど、利便性の高い購買体験が可能になります。顧客がどの販売チャネルで購入したとしても、注文情報がリアルタイムで一元管理されるシステムを採用しましょう。
Shopify POSであれば実店舗とECサイトの売上と在庫を一元管理でき、商品の予約や取り置きなども可能です。
7. 組織横断での運用体制
ウェブサイト運用チームや、カスタマーサポート、施策を企画するマーケティング、店舗スタッフなど、複数の部門が常に連携する必要があります。組織が分断されていると、そのまま顧客体験の低下に直結するため、接客対応やデータ共有をどのように行うのか運用プロセスを決めておく必要があります。またそのためには、統一されたKPIの設定などにより、目標や成果を可視化しておく方法も効果的です。
まとめ
オムニチャネルのパーソナライゼーションは、自社の持つどのチャネルでも顧客を個々の人間として接することで、質の高い顧客体験を提供するマーケティング戦略です。実現にはデータ基盤の構築やツールの導入、予算や人員の投資が必要となりますが、企業やブランドのロイヤルティの向上につながり、収益の増加にもつながるでしょう。
よくある質問
オムニチャネルのパーソナライゼーションとは?
オムニチャネルのパーソナライゼーションとは、顧客が複数のチャネルのどれを利用しても、購買行動や嗜好に基づいて最適化されている顧客体験を一貫して提供するマーケティング手法です。
オムニチャネルのパーソナライゼーションが重要な理由は?
- 消費行動が複数のチャネルにまたがるようになった
- 消費者からパーソナライゼーションが期待されている
- 満足度や顧客生涯価値が高まる
オムニチャネルのパーソナライゼーション構築のステップは?
- カスタマージャーニーを理解する
- 明確な目標を設定し、関係者との連携を図る
- 統合された顧客データ基盤を構築する
文:Tomoyo Seki





