時計、ジュエリー、香水、化粧品、アパレル、バッグなどの高級消費財を扱うラグジュアリー市場は、日本でも世界でも絶えず変化を続けています。
ラグジュアリー市場は、中長期的な成長が見込まれる一方で、消費者の価値観や購買行動には明らかな変化が見られます。ネームバリューや高級感だけでなく、ラグジュアリーブランドの世界観や購入体験の質が重視されるようになってきました。また、店舗やECなど、多様な接点で一貫した上質な体験を届けることも求められています。
この記事では、ラグジュアリー市場の規模と日本・世界の市場動向を整理し、2026年に押さえておくべき重要な変化を解説します。

2026年ラグジュアリー市場の規模
世界のラグジュアリー市場の規模
世界のラグジュアリー市場は、中長期にさらなる成長が見込まれています。Fortune Business Insightsによると、世界のラグジュアリーグッズ市場は、2025年の3,113億2,000万ドルから2034年には4,706億9,000万ドルにまで拡大する見通しです。
一方で、すべての地域やカテゴリが同じペースで伸びているわけではありません。BAIN & COMPANYは、2025年の個人向けラグジュアリーグッズ市場を横ばい基調とみており、直近では減速感も見られます。つまり、長期的には成長が期待されますが、短期的には調整局面にあると考えてもよいでしょう。
日本のラグジュアリー市場の規模
日本のラグジュアリー市場も、着実な成長が見込まれています。
調査会社のIMARCによると日本の個人向けラグジュアリーグッズ市場は、2025年に339億ドルに達し、2034年には547億ドル規模にまで拡大すると予測されています。また、カテゴリ別では、ラグジュアリーアパレル市場にも成長予測があります。Market Research Future(英語)によると、日本のラグジュアリーアパレル市場は2024年の65億4726万ドルから2035年には104億ドルへと拡大する見通しです。

2026年ラグジュアリー市場の動向
- 所有よりも意義
- ジュエリーは成長、時計は横ばい、レザーグッズは減少
- Z世代へのアプローチが課題
- モノより体験を重視
- ライフスタイル志向
- サステナビリティへの対応
- 日本では文化や伝統、職人技が価値として捉えられている
- インバウンド需要の変化で日本、アジアの存在感が高まっている
1. 所有よりも意義
世界のラグジュアリー市場では、ブランド名やロゴ、モノを所有すること自体による価値が薄れつつあります。価格の高さだけで選ばれるのではなく、そのブランドならではの意味や体験、納得感まで含めて評価される傾向が強まっています。
ラグジュアリー市場では、商品そのものの品質に加え、その価格に見合う価値をいかに伝えるかが、これまで以上に重要となっています。高級であることや知名度の高さだけではなく、ブランドの背景や世界観、購入前後を通じた一貫した体験まで含めて魅力を伝えられるかどうかが、顧客に選ばれる理由となっています。
2. ジュエリーは成長、時計は横ばい、レザーグッズは減少
世界のラグジュアリー市場では、カテゴリごとに伸び方の差が見られます。Bain & Company(英語)によると、2025年はジュエリーが4〜6%成長と引き続き力強く、アイウェアも2〜4%成長と堅調です。一方で、時計は前年比-1%〜+1%程度の横ばいにとどまり、レザーグッズは5〜7%減少しています。
ジュエリーは、ギフトや記念品としての役割に加え、感情的価値を持つ資産としても捉えられやすいカテゴリです。一方、レザーグッズは相次ぐ価格上昇や商品の新鮮味の不足などが影響し、消費者にとって以前ほど魅力が伝わりにくくなっていると考えられます。
どのカテゴリでも同じように伸びるのではなく、価格への納得感や感情的価値を持つカテゴリに需要が集まりやすくなっています。
3. Z世代へのアプローチが課題
若い世代でブランドの捉え方に変化が見られるようになりました。ラグジュアリーブランドにとっては、特に、Z世代へのアプローチが課題となっています。
昨今、伝統的なラグジュアリーブランドの価値提案に対し、Z世代の消費者が幻滅しつつあるという分析があります。これは、ラグジュアリーへの関心が失われたわけではなく、価値の捉え方や購買行動の変化が主な原因だと推測されています。
一方、デロイト トーマツの調査によると、Z世代は節約や貯蓄を重視する一方で、「趣味」「娯楽」「ご褒美」など、自分の満足感につながる支出も大切にする傾向があります。また、4割以上が実店舗とECを巧みに併用しており、高価格帯の商品であってもオンラインでの購入に積極的です。
高価格なブランド品を単に所有するのではなく、自分にとって意味があるか、納得できるかを厳密に吟味する傾向があるZ世代に、いかに納得感をもってもらえるかが鍵となります。また、店舗とECなど複数のチャネルからアプローチを通じて一貫した体験を提供することが求められているといえます。
4. モノより体験を重視
消費者は、モノを所有すること自体よりも、そこから得られる意味や体験を重視するようになっています。近年は旅行、ヘルス・ウェルネス、ホスピタリティなど体験型の消費への関心が高まっており、ラグジュアリーの価値は「何を持つか」だけでなく、「どう過ごすか」「どう感じるか」という領域へと広がっています。
ユーロモニターの調査(英語)によると、高所得層の55%は、「モノより体験」への支出を優先しています。2025年は個人向け贅沢品への支出がわずかに減る一方で、体験型ラグジュアリーへの支出が増えました。また、体験型観光の人気も高まりを見せています。
こうした体験重視の流れは日本でも、インバウンド需要と結びつきやすく、高付加価値な体験を設計する余地があると考えられます。
5. ライフスタイル志向
消費者がモノの所有だけでなく、日々の過ごし方や自分らしいライフスタイルに価値を置くようになったことを背景に、住宅、ウェルネス、不動産、滞在体験など、ライフスタイル全体に関わる提案が広がっています。高級ブランドの役割は、モノを販売することにとどまらず、心地よい空間や豊かな時間、世界観のある暮らしまで提案する方向へと進化しているといえます。
たとえば、プライベートクラブやウェルネス施設、体験型の滞在空間などは、商品とは別の接点でブランドの世界観を感じてもらう体験の場になっています。こういったライフスタイル志向の広がりは、長期的な顧客接点をつくる動きとしても注目されています。
6. サステナビリティへの対応
ラグジュアリー市場では、サステナビリティは今や重要なテーマになっています。サステナビリティは、単なるイメージ戦略ではなく、気候変動への対応や資源循環、製造過程の透明性までを含めた経営課題として捉えられるようになっています。道徳的な義務にとどまらず、利益拡大や競合との差別化、逆風への強さにつながる戦略的手段にさえなっています。
とくにミレニアル世代やZ世代においては、環境や社会への配慮は差別化要因ではなく、すでに当然の期待値になりつつあります。環境や社会への配慮、製造過程の透明性、循環型の取り組みなどは、ブランドの姿勢そのものとして見られやすくなっており、価格や知名度だけではない評価軸として機能しています。
7. 日本では文化や伝統、職人技が価値として捉えられている
とくに日本のラグジュアリー市場では、ネームバリューでなく、伝統や職人技、文化的背景に裏打ちされた価値が重視されやすい傾向があります。品質の高さや細部へのこだわり、長く受け継がれてきた技術に価値を見いだす動きは、日本市場のラグジュアリーの特徴のひとつです。こうした要素は、単なる高価格帯商品ではなく、他にはない価値としてブランドを差別化する材料にもなります。日本市場では、ブランドの背景にある歴史や美意識まで含めて魅力として受け取られやすく、それが価格への納得感にもつながります。ラグジュアリー市場のなかでも、高い独自性を備えたニッチ市場として成長を遂げる可能性があります。
8. インバウンド需要の変化で日本、アジアの存在感が高まっている
ラグジュアリー市場では、どこで商品を買うかという「購買地」の選ばれ方にも変化が見られます。かつてはパリやミラノなど欧州主要都市が中心でしたが、近年はアジアの存在感が高まり、日本も有力な購買地として注目されています。
たとえば、グローバルブルーの調査によると中国人旅行者による免税支出シェアは、2019年から2024年にかけて、日本が14%から38%へ急上昇しました。一方、フランスは16%から10%、イタリアは10%から6%へ低下しています。こうした変化は、日本市場の存在感が高まっていることを示しています。
背景には、アジア域内移動の回復に加え、円安による価格面の優位性があります。さらに、商品そのものだけでなく、文化、接客、滞在体験まで含めた総合的な価値を求める傾向が強まっていることも、日本にとって追い風になっています。
また、市場回復の内実を見ると、購買力の二極化が進んでいます。超富裕層および富裕層は買物客全体の3%にとどまる一方で、免税支出総額の43%を占めるとされており、少数の高付加価値顧客との関係構築が、かつてなく重要になっています。

ラグジュアリーブランドを成長させる3つのコツ
1. 商品だけでなく、ブランド体験全体で価値を伝える
ラグジュアリーブランドでは、商品の希少性や品質だけでなく、購入前後を通じた体験全体がブランド価値を支える基盤になります。ブランドと最初に出会う場面、商品を比較検討する場面、購入後のフォローまで含め、一貫してそのブランドらしさが感じられることが重要です。
たとえば、商品の背景や制作工程を丁寧に見せる、来店予約やオンライン接客の導線を整える、購入後にメンテナンス案内や限定イベントの招待を行うなど、購入前から購入後までブランドらしさが続く設計が求められます。ラグジュアリーにおいて、商品単体だけではなく、ブランドと接する時間全体が価値になります。だからこそ、商品リサーチを通じて顧客が何に価値を見出しているのかを把握し、売れる商品アイデアや体験設計につなげていくことが重要になります。
2. オムニチャネルで接点をつなぐ
ラグジュアリー商品との接点は、店舗だけではありません。ブランドサイト、EC、SNS、来店予約、問い合わせ対応など、顧客は複数の接点を横断してブランドと関わります。そのため、あらゆる接点において世界観や接客品質に統一感があることが重要です。
接点ごとの体験が分断されていると、情報のタイムラグや対応のばらつきが生まれ、ラグジュアリーに求められる一貫性を損ないやすくなります。シームレスなオムニチャネル体験は、顧客支出の拡大やロイヤルティ向上にもつながるとされています。チャネルを増やすだけでなく、どの接点においても同じブランド体験を届けられる状態を整えることが大切です。
3. パーソナライゼーションで一人ひとりに合った提案を行う
ラグジュアリー市場では、一人ひとりに合わせた提案や、上質で心地よい顧客対応が重要です。高価格帯の商品ほど、商品そのものの魅力だけでなく、自分に合った提案を受けられるか、安心して購入できるか、といった点が満足度に影響しやすくなります。
そこで重要になるのが、パーソナライズされた体験です。新作の案内を顧客ごとに出し分ける、好みに合った商品を提案する、購入前後を通じて丁寧にフォローするなど、細やかな対応が差別化につながります。商品を売るだけでなく、「自分に合ったブランドだ」と感じてもらえる関係づくりが、ラグジュアリーにおいては特に重要です。生成AIの活用によって、ターゲットを絞ったキャンペーンの展開や、より直感的なリテール体験の提供、深い顧客理解が進みやすくなっているとされています。

ラグジュアリートレンドに対応するためのコマース基盤とは
安定して運用できる
ラグジュアリーブランドでは、限定商品の発売や繁忙期など、アクセスや注文が一気に増える局面があります。平常時は問題なく見えていても、こうしたタイミングでサイトが不安定になったり、決済が停止することは、甚大な売上損失につながります。アクセスが集中しても安定して表示できることや、スムーズに購入できることが重要です。
各種システムが連携している
ラグジュアリーブランドは、オンラインストア、実店舗、SNS、イベントなど、さまざまな接点で顧客とつながります。これらの接点を個別に運用するのではなく、できるだけ同じ基盤の上で管理できるようにすると、どこで接しても違和感のない体験を届けやすくなります。そのためには、販売や顧客対応に関わるシステムが連携していることが大切です。
連携しておきたいシステムには、たとえば次のようなものがあります。
- ERP:売上や在庫、会計などをまとめて管理するための仕組み
- CRM:顧客情報や購入履歴を管理し、販促や接客に活かすための仕組み
- ソーシャルコマース:SNS上で商品紹介から販売まで行える仕組み
- メールマーケティングツール:メール配信によって販促やリピート促進を行うための仕組み
- 決済処理システム:支払い情報を処理するための仕組み
- 注文管理ツール:注文から出荷、返品対応までを管理するための仕組み
- 倉庫管理プラットフォーム:倉庫内の在庫や出荷業務を管理するための仕組み
- POSシステム:店舗の会計や販売情報を管理するための仕組み
システム間で情報が連携できていれば、店舗とECをまたいで顧客情報や在庫状況を把握しやすくなるため、接客や販売の流れがスムーズになります。
拡張性がある
さらに、今後の展開に合わせて無理なく拡張できることも大切です。海外展開も視野に入れるなら、訪問者の言語に合わせた表示、通貨に応じた価格表示、現地で使われる決済手段への対応、各国の法規制への対応なども必要になります。こうした機能を備えていれば、市場ごとに個別の仕組みを増やしすぎることなく、無理のない展開がしやすくなります。たとえば、次のような対応が必要になります。
- 顧客の言語に合わせてサイトを表示する
- 顧客の通貨に合わせて価格を表示する
- 各国で利用されやすい決済手段に対応する
- 関税、データ管理、サステナビリティ報告などの規制に対応する
目先の販売だけでなく、将来的な事業の拡大を見据え、無理なく拡張できる仕組みを整えておくことが大切です。
総保有コスト(TCO)が見通せる
ラグジュアリーブランドの基盤には、市場環境や消費者行動の変化に即応し、新機能の追加や改善を実行できる柔軟性が求められます。システムの制約が大きいと、新しい施策を試したいときにも改善のスピードが落ちてしまうためです。
導入時の価格だけで判断すると、運用開始後に想定以上のコストがかかることがあります。基本プランでは必要な機能が足りず、追加連携やカスタマイズを重ねるうちに、当初の見積もりを大きく上回ってしまうケースもあります。市場拡大や顧客体験の改善に取り組むブランドほど、初期費用だけでなく、保守、連携、社内調整まで含めた総保有コスト(TCO)を見て判断することが重要です。
TCOを確認するときは、月額や初期費用だけでなく、次のような点もあわせて見ておくとよいでしょう。
- 必要な機能が基本プランに含まれているか
- 外部システムとの連携に追加費用がかかるか
- カスタマイズや保守にどれくらいの工数がかかるか
- 社内で運用できるか、それとも外部パートナーの支援が必要か
- 今後チャネルや市場が増えたときに、追加コストがどの程度発生しそうか
こうした点まで含めて比較しておくと、導入後に「想定より運用が重い」「改善したいのに追加費用がかかりすぎる」といった事態を防ぐことができます。
まとめ
ラグジュアリー市場は、今後も持続的な成長が期待される市場です。一方、ブランドが選ばれる基準は変わりつつあります。ブランド名や価格の高さだけでなく、そのブランドならではの意味や体験、納得感まで含めて価値が判断されるようになっています。カテゴリごとの動きにも差があり、Z世代の価値観の変化、モノから体験へのシフト、サステナビリティへの関心の高まりなども、今後の市場を考えるうえで欠かせない視点です。
こうした変化に対応するには、商品そのものの魅力に加え、ブランド体験全体をどう設計するかが重要になります。店舗とECを横断した一貫した接点づくり、パーソナライズ、顧客データの活用、そして拡張性の高い基盤づくりまで含めて整えていくことが、今後の成長を支える鍵になります。市場分析や市場調査をもとに消費トレンドを捉えながら、自社に合う商品リサーチを継続することも、引き続き重要な要素となります。
ラグジュアリー市場についてのよくある質問
ラグジュアリー市場とは?
ラグジュアリー市場とは、高価格帯の商品やサービスを扱う市場のことです。バッグや時計、ジュエリー、ファッション・アパレル、化粧品などの高級品に加えて、近年は高級ホテルや体験型サービスなども含めて語られることがあります。
ラグジュアリー市場で伸びているカテゴリは?
2026年現在の世界市場では、ジュエリーが堅調な推移を見せており、アイウェアやフレグランスも比較的安定しています。一方で、時計は横ばい傾向、レザーグッズは価格上昇などの影響を受けて伸び悩みが見られます。
また、体験型の高級な旅行パッケージやプライベートクラブ、ウェルネス施設といったライフスタイルに関連するカテゴリにも人気の高まりが見られます。
日本のラグジュアリー市場では、どの分野に成長予測がある?
Market Research Future(英語)によると、日本の高級アパレル市場は2024年に65億4,726万ドル規模と推定され、2035年には104億ドルに拡大する見通しです。予測期間の年平均成長率は4.3%とされています。
文:Taeko Adachi





