オンラインストアの成功には、顧客が求める商品と効果的なマーケティングが欠かせません。しかし、どれほど商品や施策が優れていても、収支や資金繰りが合わなければ事業を継続することはできません。詳細な財務計画は、長期的なビジネスの成長の要となります。
Shopifyのデータでも、前年同期比で大きく成長している高成長ストアは、そうでないストアに比べて財務計画を策定している傾向が高いことが示されています。先を見通して資金や収益を管理する姿勢は、経済の先行きが不透明な時期には特に重要ですが、事業規模にかかわらず、すべての事業者にとって有益です。
詳細な財務計画を作成することで、他の事業者が見落としがちな成長機会を見つけられる場合があります。同時に、資金不足や固定費の増加、売上変動など、成長計画を立てるうえで考慮すべき制約やリスクも把握しやすくなります。
この記事では、財務計画に含むべき内容や、EC事業の成長にどのように役立つのかを解説します。財務計画の基本から作成方法、事業の種類や規模を問わず押さえておきたいポイントまで紹介します。
財務計画とは
財務計画とは、個人または企業の現在の財務状況を整理し、将来の目標を設定したうえで、その達成に向けた具体的な方針や手段を明確にするプロセスです。
財務計画は、財務面におけるロードマップとして機能し、「現状」「目標」「そこに至るための道筋」を体系的に示します。これにより、資金の使い方や投資判断、リスク管理などを計画的に進めることが可能になります。
財務計画は予算と混同されがちですが、予算が一定期間の収支管理に焦点を当てるのに対し、財務計画はより広い視点で財務全体をとらえているという点で違いがあります。具体的には、資産状況、キャッシュフロー、収益予測、支出見込みなどを含め、全体的な財務の健全性を把握するための情報が盛り込まれます。
また、財務計画には、達成すべき成長目標だけでなく、成長課程で想定されるリスクや課題も含まれるのが一般的です。
財務計画の必要性
財務計画はすべての企業が作成しなければならないというわけではありませんが、、作成することには多くのメリットがあります。
財務計画を立てることで、現在の財務状況だけでなく、将来の目標やその達成方法を具体的に検討できます。事業の成長は偶然ではなく、計画的な取り組みによって実現されるものです。明確な目標がない場合、取り組みの方向性が定まらず、結果として十分な成果につながらない可能性があります。
例えば、オンラインショップを運営する事業者が実店舗の出店を目指す場合、具体的な財務計画を立てることで、現在の固定費や運転資金を踏まえつつ、出店に必要な資金や達成すべき売上目標を現実的に算出できます。
このような考え方は、マーケティング施策の強化、人員の増強、製品ラインの拡張や提供サービスの拡大など、さまざまな成長施策にも当てはまります。具体的な数値や行動計画を含めることで、目標がより実行・管理しやすいものになります。
財務計画の作成方法
事業資金の調達(銀行融資など)を検討している場合、金融機関から詳細な財務計画の提出を求められるのが一般的です。この際、審査基準に精通した税理士や公認会計士などの専門家に相談すると、より実現性の高い計画を作成できます。資金調達の有無にかかわらず、事業の成長戦略を明確にするためのロードマップとして財務計画を作成することも有効です。
業種や規模にかかわらず、実務で活用しやすい財務計画を作成するには、次の3つの要素を押さえることが重要です。
- 貸借対照表(バランスシート)
- キャッシュフロー予測
- 損益計算書
貸借対照表(バランスシート)
財務計画における貸借対照表は、会社のすべての資産、負債、所有者が保有株式を記載した文書です。
ほとんどの事業者やビジネスオーナーにとって、資産は通常、流動資産と固定資産に分類されます。流動資産には、会社が使用できる現金額や、未収請求額(売掛金とも呼ばれる)など、会社が支払いを受けるべきお金が含まれます。固定資産は、土地、建物、設備など、会社が所有する有形の物です。無形資産という第三のカテゴリもあり、著作権、特許、知的財産を指します。
負債は、会社が負っている債務です。サプライヤーやベンダーに対する未払い金、従業員への報酬、場合によっては未払いの税金が含まれます。
キャッシュフロー予測
キャッシュフロー予測とは、将来の一定期間における資金の流入と流出を見積もることです。企業が資金繰りを適切に管理し、支払い能力を維持できるかを判断するための重要な指標であり、財務計画の中核を担います。
キャッシュフロー計算書との違いにも注意が必要です。キャッシュフロー予測は将来の資金の動きを見通すものであるのに対し、キャッシュフロー計算書は過去の一定期間における実際の資金の流れを記録・報告するものです。
キャッシュフロー予測では、主に次の3つの要素をもとに資金の動きを把握します。
- キャッシュ収入:一定期間内に事業へ実際に入金される資金のことを指します。「キャッシュ」という表現から現金のみを想像しがちですが、日本の実務では、銀行振込やクレジットカード決済、電子決済なども、入金が確定しているものは含めて考えます(入金タイミングには注意が必要です)
- キャッシュ支出:事業運営に伴って発生する日常的な支払いです。仕入れ、人件費、家賃、広告費、水道光熱費など、継続的に発生する費用を中心に把握します。単発的・例外的な支出は、必要に応じて別途管理すると実態を把握しやすくなります。
- キャッシュ収入とキャッシュ支出の調整:キャッシュ収入とキャッシュ支出の差額を算出することで、資金の過不足を把握できます。実務では、前月からの繰越残高を加味したうえで当月の収支を確認することで、資金繰りの見通しをより正確に把握できます。
損益計算書
損益計算書(P/L)は、一定期間における企業の収益、費用、利益の状況をまとめた財務書類です。事業がどれだけ利益を上げているかを把握するための基本的な資料として活用されます。
多くの企業では四半期ごとや年次で作成されますが、創業間もない企業や中小企業では、資金や業績の変動を細かく把握するために月次で作成するケースも一般的です。特に事業初期は数値が安定しにくいため、定期的な確認が重要になります。
損益計算書には、一般的に次のような項目が含まれます。
- 売上高(収益):商品の販売やサービス提供によって得られる収入
- 費用:仕入原価や人件費などの売上に直接関わる費用(売上原価)と、広告費や家賃、通信費などの販売費および一般管理費(販管費)
- 営業利益:売上高から売上原価と販管費を差し引いた利益
- 税金:法人税、住民税、事業税など、日本の税制度に基づく各種税金
- 当期純利益:すべての費用と税金を差し引いた最終的な利益
財務計画はなぜ目標達成に役立つか?
前述のように、財務計画を準備するなら、ビジネス資金調達を求める際に、潜在的な貸し手に対して信用力を示すツールとなります。しかし、事業を成長させるためにローンを借りることを考えていない場合でも、適切な財務計画は、会社の本当の財務健全性を視覚化し、具体的な成長目標に向けて取り組む助けになります。
製品ラインを多様化したり、実店舗を開設したり、スタッフを増員したりすることを希望している場合、しっかりした財務計画は、会社の実績や実際のデータに基づいた予測を立てて、何が現実的かを特定するのに役立ちます。
多くのビジネスオーナーは、積極的な成長に向けた準備をしないために目標を達成できないことがあります。たとえビジネスが順調であっても、成長が「自然に」起こるのを待つのは賢明ではありません。実際にはビジネスを成長させる持続的かつ意図的な努力が必要です。不確実な経済状況では特にそうです。
ほとんどのビジネスオーナーは、拡張と成長に向けた準備に伴う不安を経験したことがあります。しかし、財務計画を作成するなら、これまで考えもしなかったような機会に挑戦する自信が湧いてくるかもしれません。
財務計画に関するFAQ
財務計画とは?
財務計画とは、個人や企業の現在の財務状況を把握し、将来の財務目標とその達成に向けた具体的な戦略を整理するプロセスです。短期的な資金管理から中長期的な成長戦略までを含めて検討するのが一般的です。
財務計画はなぜ必要?
財務計画を立てることで、事業の収支や資金繰りを可視化し、どの分野に注力すべきかが明確になります。その結果、財務の健全性を維持しながら目標達成に向けた判断がしやすくなります。短期・中長期の目標も整理されるため、計画的に事業を成長させやすくなります。
財務計画には何が含まれる?
財務計画には、企業の財務状況を総合的に把握するために、主に次のような要素が含まれます。
- 貸借対照表(バランスシート)の作成
- キャッシュフロー予測の作成
- 損益計算書の作成
これらを組み合わせることで、資産状況、収益性、資金繰りを一体的に管理できます。





