はじめに
「FAX・電話・メールで回している卸取引をそろそろシステム化したいが、どこから手を付ければよいかわからない」
「受発注システム、Web受発注、BtoB ECといった言葉が混在していて、自社に必要なのがどれなのか整理できない」
「営業担当が注文書の転記に追われていて、ミスと残業が減らない」
法人取引を担うEC・営業企画・情報システム部門の担当者から、近年こうした相談がよく寄せられます。
受発注業務は、企業活動のなかでも歴史が長く、商慣習がそのまま業務フローに残っているため、デジタル化の難易度が高いです。
買手企業ごとに異なる発注書フォーマット、得意先別の価格表、締め支払いの条件、与信枠、承認フロー、定期発注のリズム——こうした業務の機微を踏まえずにシステムを入れると、「結局FAXに戻った」という結末に至りがちです。
一方で、人手不足・物流2024年問題・働き方改革・インボイス制度といった環境変化が同時に進み、紙とExcelで回し続けることのリスクは、年々大きくなっています。
国内のBtoB-EC市場規模は2023年時点で465.2兆円、EC化率は40.0%(出典:経済産業省『令和5年度 電子商取引に関する市場調査』2024年)。
EDIを含む電子受発注の比率は4割を超えましたが、それでも全BtoB取引の6割は紙・電話・FAX・メールで動いているのが実態です。
電子化の余白はまだ大きく、受発注システムは多くのBtoB事業者にとって「次の3〜5年で必ず通る道」になりつつあります。
本記事では、受発注システムの定義、関連する言葉(EDI・Web受発注・BtoB EC・OMS)との違い、主要な機能、種類別の特徴、選び方の評価軸、主要サービスの並列比較、導入ステップ、よくある失敗パターン、BtoB ECとの統合設計までを、検討段階の担当者が判断材料として使える形でまとめました。
「FAX・電話の受発注をどう切り替えるか」「卸取引のWeb化をどう設計するか」「Shopify Plusを軸にBtoB ECと受発注を統合するならどう組むか」——こうした問いを抱える方は、ご活用ください。
目次
-
受発注システムとは|定義と役割
-
受発注システムとEDI・Web受発注・BtoB ECの違い
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受発注システムの主要機能|8つの領域
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受発注システムの種類|3つのタイプを並列で比較
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受発注システムを導入すべき5つのサイン
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受発注システムの選び方|7つの評価軸
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主要受発注システムの特徴(フラットな並列紹介)
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受発注システム導入の7ステップ
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受発注システム導入で陥りがちな失敗パターン
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受発注システムとBtoB ECの統合設計|次の打ち手の全体像
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まとめ
【無料相談】貴社の受発注業務のデジタル化をご支援します 受発注システムの選定、卸取引のWeb化、Shopify Plusを含むBtoB EC基盤との統合設計について、Shopifyの専門家が無料でご相談に乗ります。取引先構成・商品マスタの状態・既存システムを踏まえた、現実的なロードマップをご提案します。
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1. 受発注システムとは|定義と役割
受発注システムとは、企業間(BtoB)の受注業務と発注業務を、紙・FAX・電話・メールの代わりにシステム上で完結させる仕組みを指します。
売手(受注側)と買手(発注側)の両方を扱うのが特徴で、片側のみを対象にする「受注管理システム」や「購買管理システム」とは扱う範囲が異なります。
1-1. 受発注システムの基本的な定義
受発注システムは、商品マスタ・価格表・取引先マスタ・発注フォーマット・承認フロー・在庫情報を共通の土台に据え、買手の発注操作と売手の受注処理を1つのシステムで連動させる仕組みです。
具体的には、次のような業務を扱います。
-
商品カタログの提示(買手別の取扱商品・価格を出し分け)
-
受発注データの送受信(Web画面・API・EDI・CSV)
-
在庫数・納期の即時開示
-
発注承認フロー・与信チェック
-
出荷指示・納品通知・請求データの生成
紙の注文書をWeb画面に置き換えるだけの単純な電子化に留まらず、商品マスタや取引条件をシステム側で一元管理することで、買手・売手双方の手作業を減らせるのが本質的な価値です。
なお、文脈によっては「受発注管理システム」「BtoB受発注システム」「Web受発注システム」「受発注プラットフォーム」と呼ばれることもありますが、本記事ではBtoB領域の受発注を対象にしたシステム全般を「受発注システム」と総称します。
1-2. 売手・買手双方の業務を扱うのが特徴
受発注システムが他のシステムと一線を画す点は、売手・買手の双方の業務をカバーする設計思想にあります。
|
立場 |
主な業務 |
システムでカバーする範囲 |
|---|---|---|
|
売手(受注側) |
注文受付・在庫引当・出荷指示・請求 |
受注一覧・出荷指示作成・請求書発行 |
|
買手(発注側) |
商品検索・発注・納期確認・支払い |
商品カタログ閲覧・発注操作・履歴管理 |
売手側のシステムだけを電子化しても、買手がFAXのままなら効果が限定的になります。
逆に買手側だけWeb発注フォームを用意しても、売手側が紙で処理していれば、社内オペレーションは変わりません。
両者を同じプラットフォームで結ぶことで、注文1件あたりの処理時間とエラー率を同時に下げられるのが、受発注システムの強みです。
1-3. なぜいま受発注システムの重要度が上がっているのか
受発注業務のデジタル化が急速に進む背景には、複数の構造的変化があります。
第一に、市場環境の変化です。
国内のBtoB-EC市場規模は2023年時点で465.2兆円、EC化率は40.0%(出典:経済産業省『令和5年度 電子商取引に関する市場調査』2024年)。
紙・FAX・電話・メールに残っている6割の取引を、今後5〜10年で順次電子化していく流れは、ほぼ確実視されています。
第二に、人手不足と働き方改革の影響です。
受発注業務は属人化しやすく、ベテラン社員1人が複数の取引先の事情を頭に入れて回しているケースが少なくありません。
退職・育休・転職で担当が変わるたびに業務が止まる構造は、組織として持続性に欠けます。
第三に、物流2024年問題と納期短縮のプレッシャーです。
受注締切時刻が早まる傾向のなかで、受発注処理に半日〜1日かけていては、出荷リードタイムが間に合わなくなりつつあります。
受発注のリードタイムをいかに短縮するかが、物流現場の競争力に直結する時代になりました。
第四に、インボイス制度・電子帳簿保存法への対応です。
請求書・注文書を紙で扱い続けることのコンプライアンス上の負荷が増し、電子化への舵切りを後押しする流れができています。
これら4つの圧力が同時に効くことで、「あと3〜5年は紙で持たせる」という選択肢が現実的でなくなりつつあるのが、いまの局面です。
2. 受発注システムとEDI・Web受発注・BtoB ECの違い
受発注システムを検討するうえで、最初に整理しておきたいのが関連用語との関係です。
実務で混同されやすい4つの言葉「EDI」「Web受発注」「BtoB EC」「OMS」との違いを順に見ていきます。
2-1. 受発注システムとEDI
EDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)は、企業間の取引データを標準化されたフォーマットで自動的にやり取りする仕組みです。
歴史が長く、大手卸・小売・製造業の基幹間取引で広く使われてきました。
|
項目 |
EDI |
受発注システム |
|---|---|---|
|
通信方式 |
専用回線・VAN・インターネットEDI |
Web画面・API・CSV・ファイル連携 |
|
ユーザー操作 |
基幹システム同士の自動連携が中心 |
Web画面での手動操作が中心 |
|
データ形式 |
CII・JCA・流通BMS等の標準フォーマット |
システム独自のフォーマット |
|
主な利用層 |
大手企業の継続取引 |
中堅・中小企業含む幅広い取引 |
|
導入コスト |
専用機器・通信費が必要なケースもあり |
クラウド型なら低コストで開始可能 |
EDIは「大手企業同士のシステム間連携」、受発注システムは「Webブラウザで人が操作するWeb受発注」をベースに発展してきた、というのが歴史的な棲み分けです。
ただし最近は、両者の境界が曖昧になってきました。
クラウド型の受発注システムでも、EDI接続のオプションを持つ製品が増え、買手の規模に応じてWeb画面とEDIを使い分けられるハイブリッド構成が標準になりつつあります。
2-2. 受発注システムとWeb受発注
Web受発注(Web-EDI、Web発注システム)は、ブラウザ経由で発注・受注を行う仕組みの総称です。
受発注システムとほぼ同義で使われる場面もありますが、厳密には「受発注業務全体をカバーするシステム」のうち、Web画面操作を中心としたものをWeb受発注と呼ぶケースが多くなります。
|
観点 |
Web受発注 |
受発注システム |
|---|---|---|
|
範囲 |
Web画面での発注・受注操作 |
EDI・API・Web画面まで含む業務全体 |
|
主な対象 |
中堅以下の取引先 |
大手取引先+中堅・中小取引先 |
|
拡張性 |
Web画面に最適化 |
多チャネル対応・連携設計まで含む |
実務では「Web受発注は受発注システムの一機能・一形態」と捉えるのが整理しやすい関係です。
中小取引先にはWeb画面、大手取引先にはEDI連携、というように受発注システム側で複数のインターフェースを切り替えられる構成が、いま選ばれやすい設計です。
2-3. 受発注システムとBtoB EC
BtoB ECは、企業間取引をECサイト上で行う仕組み全般を指します。
受発注システムと重なる部分が大きく、両者を同じ意味で使う場面も少なくありません。
|
観点 |
受発注システム |
BtoB EC |
|---|---|---|
|
出発点 |
既存取引先の業務効率化 |
新規顧客開拓を含むEC展開 |
|
ユーザー体験 |
業務利用前提の操作画面 |
Webサイトとしての訴求も重視 |
|
商品見せ方 |
カタログ・型番ベース |
カテゴリ・特集・レコメンド含む |
|
ターゲット |
クローズド(既存取引先) |
クローズド/オープン/ハイブリッド |
受発注システムは「業務の電子化」を出発点に持つことが多く、BtoB ECは「販売チャネルとしてのEC」を出発点に持つことが多い、というニュアンスの違いがあります。
ただし最近は、両者が融合する方向に動いています。
既存取引先向けのクローズドな受発注機能と、新規法人開拓を狙ったオープンなBtoB EC機能を、同じプラットフォーム上で同居させる事業者が増えてきました。
Shopify Plusに搭載されているB2B機能はこの典型例で、企業アカウント管理・卸価格・支払い条件・見積もりといった受発注機能と、Web集客・カタログ・自動レコメンドといったEC機能を、同一基盤で動かす設計が可能です。
「受発注システムか、BtoB ECか」と二者択一で考えるよりも、「既存取引先の電子化と新規顧客開拓を、同じ基盤でどこまでカバーするか」という問いに置き換えると、検討が前に進みやすくなります。
2-4. 受発注システムとOMS(受発注管理システム)
OMS(Order Management System)は、ECサイト・モール・実店舗・電話・FAXなど複数チャネルの注文を一元的に受け取り、在庫引当・出荷指示・顧客対応までを束ねる司令塔のシステムです。
国内では「OMS=受発注管理システム」と訳されることがありますが、本記事で扱う「BtoBの受発注システム」とは、対象範囲が部分的に異なります。
|
観点 |
受発注システム(BtoB) |
OMS |
|---|---|---|
|
主な対象 |
売手⇔買手の取引(卸・代理店・継続発注) |
複数チャネルの注文統合(自社EC・モール・店舗) |
|
中心となる業務 |
受発注・与信・請求 |
注文取込・在庫引当・出荷指示 |
|
ユーザー像 |
売手の営業・受注担当/買手の購買担当 |
EC運営者・カスタマーサポート・物流担当 |
|
重点機能 |
取引先別の価格・カタログ・承認フロー |
チャネル別の在庫・出荷・顧客対応 |
両者は重なる部分もありますが、受発注システムは「買手⇔売手のシステム連携」、OMSは「複数チャネルの注文を1基盤に集約するハブ」という違いがあります。
実際の運用では、受発注システムで受け付けた注文をOMSへ流し込み、ECやモールからの注文と統合してWMS(倉庫管理システム)へ出荷指示を出す、という連携が組まれることが多くなります。
2-5. 全体像のイメージ
ここまでの4つを1つの構造で整理すると、次のような関係になります。
[買手]──┬─ EDI連携(基幹間自動連携)─┐
├─ Web受発注(ブラウザ操作)──┤
├─ BtoB EC(カタログ+EC体験)─┤→ [受発注システム] → [OMS] → [WMS] → 出荷
└─ FAX・電話・メール(紙運用)─┘ │
→ [ERP・会計] → 売上計上
受発注システムは「買手と売手の接点を電子化する層」、OMSは「複数チャネルから集まる注文を業務処理に落とし込む層」、と役割を分けて捉えると、選定の議論が整理されます。
3. 受発注システムの主要機能|8つの領域
受発注システムが備える機能は製品によって幅がありますが、業務の流れに沿って整理すると全体像をつかみやすくなります。
検討時に押さえておきたい主要機能を8領域に分けて見ていきます。
3-1. 商品カタログ・取引先別の出し分け
受発注システムの起点となるのが、商品カタログの管理です。
BtoB特有の難しさは、商品ラインナップ・型番・価格が取引先ごとに異なる点にあります。
-
取引先別の取扱商品・取扱型番の制御
-
得意先別の価格表(卸価格・代理店価格・スポット価格)
-
数量割引・キャンペーン価格の自動適用
-
在庫数の開示/非開示の取引先別制御
「誰に何をどの価格で見せるか」を細かく設計できるかが、受発注システムの基本性能を見極める起点になります。
3-2. 発注機能(買手向け画面)
買手が発注操作を行うWeb画面の使い勝手は、定着率を大きく左右します。
-
型番直接入力・QRコード読取・前回発注からのリピート
-
お気に入り商品・定期発注テンプレートの登録
-
数量・納期・配送先・備考の入力
-
カート機能(複数商品をまとめて発注)
-
スマートフォン・タブレット対応
買手の現場担当者は、発注業務に多くの時間を割けません。
「3クリックで定期発注が完了する」「QRコードを読み取ればすぐ発注画面が立ち上がる」といった現場目線の使いやすさが、利用継続率を決めます。
3-3. 受注機能(売手向け画面)
売手側の受注処理画面では、注文の確認・引当・出荷指示までを1画面でこなせる構成が中心です。
-
注文一覧(取引先・商品・納期・ステータスでフィルタ)
-
在庫引当・出荷指示の作成
-
出荷予定日の自動算出
-
注文確認書・出荷案内のPDF生成
受注一覧の検索性とフィルタの自由度が、受注担当者の生産性を左右します。
3-4. 与信管理・承認フロー
BtoB受発注の特徴である与信枠と承認フローを、システム側でどこまで吸収できるかは重要な評価軸です。
-
取引先別の与信枠設定と残枠表示
-
与信オーバー時の自動ホールド・アラート
-
買手社内の上長承認フロー(金額・カテゴリ別の承認ルート)
-
売手社内の特価対応・与信例外の承認フロー
与信・承認は商習慣に深く根ざしている領域のため、システムのルールエンジンの柔軟性が問われます。
3-5. 見積機能
BtoBでは、注文の前に見積を交わすケースが多くなります。
-
取引先別・案件別の見積作成
-
見積→受注への自動転記
-
見積バージョン管理(改訂履歴)
-
見積承認フロー
営業担当が見積作成に追われる状況を、テンプレートと自動転記でどこまで圧縮できるかが、受発注システムの実務価値を高めます。
3-6. 請求・支払い管理
請求と支払いの流れは、BtoBでは月締め・サイト払いが基本になります。
-
締め日別の請求書一括発行
-
取引先別の支払いサイト・支払い条件管理
-
入金消込・未収金管理
-
インボイス制度対応(適格請求書発行・登録番号管理)
-
電子帳簿保存法対応(電子取引データの保存要件)
法対応のアップデート速度はベンダーによって差が出やすく、選定時に最新の対応状況を確認しておきたいです。
3-7. 既存システム連携(基幹・在庫・出荷・会計)
受発注システムは単体で完結せず、既存の基幹システム(ERP)・在庫管理(WMS)・会計システム・配送業者システムと連携してはじめて、現場業務として動きます。
主要な連携データは次のとおりです。
-
商品マスタ・取引先マスタ
-
受注データ・出荷指示
-
在庫情報・出荷実績
-
売上データ・請求データ・入金データ
API連携の柔軟性、CSV連携の使い勝手、標準コネクタの有無が、連携工数とランニングコストを左右します。
「既存システムと何をどの粒度で連携するか」は、要件定義の中核に据えるべき論点です。
3-8. レポート・分析機能
受発注の運用状況を可視化する分析機能は、運営チームの改善サイクルを支えます。
-
取引先別・商品別・期間別の売上・受注件数
-
受注リードタイム・処理ボトルネック
-
キャンセル率・返品率
-
売上構成・在庫回転率
ベテラン担当者の頭の中にあった「取引先ごとの動き」を、データとして全員に共有できるようになると、組織の受発注運用がぐっと安定します。
4. 受発注システムの種類|3つのタイプを並列で比較
受発注システムは大きく、クラウド型(SaaS型)・パッケージ型(オンプレ/プライベートクラウド)・コマース一体型(BtoB EC兼用)の3つに分類できます。
それぞれ初期費用・カスタマイズ性・連携設計の柔軟さの傾向が異なります。
4-1. クラウド型(SaaS型)受発注システム
ベンダーが提供するクラウドサービスをサブスクリプションで利用するタイプです。
-
初期費用:数十万円〜数百万円
-
月額費用:数万円〜数十万円(取引先数・受注件数・SKU数による従量課金が一般的)
-
構築期間:1〜3ヶ月
-
特徴:低コスト・短期間で導入しやすく、機能アップデートも自動。標準機能の範囲内でのカスタマイズが基本
中堅・中小の受発注業務や、ベテラン担当者の退職に備えて早期に脱属人化を進めたい事業者で広く採用されています。
スモールスタートして、効果を見ながら取引先を段階的に巻き込んでいくアプローチに向きます。
4-2. パッケージ型受発注システム
自社のサーバーやプライベートクラウド上にシステムを構築する方式です。
-
初期費用:1,000万円〜数千万円
-
月額・保守費用:月数十万円〜
-
構築期間:6〜18ヶ月
-
特徴:高カスタマイズ性。既存ERPとの密結合な連携を組みやすい
商品マスタが複雑な大手卸・製造業、与信管理や承認フローを社内独自のルールで運用してきた事業者、基幹システムとの密結合が必要な大規模取引で選ばれるケースが多くなります。
4-3. コマース一体型(BtoB EC兼用)
ECプラットフォームがBtoB機能を内包しているタイプです。
受発注機能とEC機能を1つのプラットフォームで動かすため、既存取引先の電子化と新規顧客開拓を同じ基盤で進められる点が特徴です。
-
初期費用:プラットフォーム自体の料金に内包
-
月額費用:プラン料金+アプリ拡張費用
-
構築期間:数週間〜数ヶ月
-
特徴:BtoB ECとして集客にも使え、企業アカウント管理・卸価格・支払い条件等のB2B機能が標準搭載
Shopify Plusに搭載されているB2B機能や、海外発のコマースプラットフォームの一部がこの形をとります。
BtoB ECと受発注を同じ基盤で運営したい事業者、複数チャネル(BtoB・BtoC・モール・実店舗)を統合したい事業者との相性が良い領域です。
4-4. タイプ別の比較表
|
項目 |
クラウド型 |
パッケージ型 |
コマース一体型 |
|---|---|---|---|
|
初期費用 |
数十万円〜数百万円 |
1,000万円〜数千万円 |
プラットフォーム料金に内包 |
|
月額費用 |
数万円〜数十万円 |
保守費用月数十万円〜 |
プラン料金+アプリ費 |
|
構築期間 |
1〜3ヶ月 |
6〜18ヶ月 |
数週間〜数ヶ月 |
|
カスタマイズ性 |
標準機能内が中心 |
高い |
アプリ+拡張機能で対応 |
|
既存ERPとの連携 |
標準コネクタ+API |
密結合可能 |
API+アプリ |
|
BtoB EC機能 |
限定的(オプション) |
個別開発 |
標準搭載 |
|
向く事業者 |
中堅・中小、段階導入 |
大手・密結合要件 |
EC兼用・統合志向 |
「BtoB ECとしての集客・顧客開拓まで視野に入れるか」「既存ERPとどの粒度で連携するか」「投資規模を3年でどう見るか」の3軸が、タイプ選定の主な論点です。
5. 受発注システムを導入すべき5つのサイン
受発注システムは、必要な事業者にとっては「早く入れたほうがよい」投資ですが、状況次第ではFAX運用のままでも回ります。
導入を真剣に検討すべき5つのサインを整理します。
5-1. FAX・電話・メールの注文処理に1日数時間以上を費やしている
受注担当者が注文書の転記・社内連絡・在庫確認・出荷指示作成に追われ、半日〜1日を割いている状態です。
受注件数が月数百件を超えてくると、人手による処理が物理的に追いつかなくなり、出荷リードタイムや誤出荷の発生率に影響が出始めます。
このタイミングが、受発注システム検討の典型的なきっかけです。
5-2. 取引先からEDI接続・Web受発注を求められている
買手企業(特に大手小売・卸・製造業)から、EDI接続またはWeb受発注の対応を求められるケースが増えています。
対応できないと取引縮小や取引停止につながる場面もあるため、受発注システムの導入が「攻め」ではなく「守り」のIT投資になります。
「将来的に対応を求められる可能性が高い取引先がある」段階で、早めに準備を進めておくと選択肢が広がります。
5-3. 受注業務が特定の担当者に属人化している
ベテラン社員1人が複数取引先の事情を頭に入れて回している状態は、組織として持続性に欠けます。
退職・育休・転職で担当が変わるたびに業務が止まる、引き継ぎに数ヶ月かかる、といった状況は、受発注システム導入で大きく緩和できる典型例です。
「あの人がいないと回らない」業務が3つ以上ある場合、システム化の優先度を上げる価値があります。
5-4. 商品マスタ・価格表の管理が煩雑になっている
取引先ごとの価格表・取扱商品・キャンペーン情報をExcelで管理し、メール添付で更新通知している運用は、ミスと工数の温床になります。
商品マスタ・価格表をシステム側で一元管理し、買手側にはWeb画面で常に最新版を見せる、という形に切り替えるだけで、運用工数とエラー率が大きく下がります。
5-5. BtoB ECや新規顧客開拓を視野に入れている
既存取引先の電子化に加えて、新規法人顧客の獲得や、卸取引のオンライン化を視野に入れ始めた段階です。
このフェーズでは、業務効率化向けの受発注システム単体ではなく、BtoB EC機能と統合できるコマース一体型のプラットフォームを選んでおくと、後の拡張がスムーズになります。
「3年後にBtoB ECに踏み出す可能性があるか」を社内で議論しておくと、現時点の選定が変わります。
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6. 受発注システムの選び方|7つの評価軸
受発注システムは、機能の網羅性だけで選ぶと、運用開始後に「やりたいことができない」「現場が使ってくれない」という事態に陥りがちです。
選定の段階で押さえておきたい7つの評価軸を整理します。
6-1. 取引先構成との適合性
買手の規模・件数・取引形態が、受発注システムの選定を大きく左右します。
|
取引先構成 |
推奨される方向性 |
|---|---|
|
大手数社との継続取引が中心 |
EDI連携の柔軟性を重視。パッケージ型かハイブリッド型 |
|
中堅・中小取引先が多数 |
Web受発注の使いやすさを重視。クラウド型 |
|
新規法人開拓も視野 |
BtoB EC機能を持つコマース一体型 |
|
大手+中小が混在 |
EDIとWeb受発注の両対応が可能なクラウド型/コマース一体型 |
自社の取引先構成を俯瞰し、「一番ボリュームが大きい取引パターンに最適化されているか」を最初の評価ポイントにすると、選択肢が絞れます。
6-2. 既存システムとの連携
ERP・基幹・在庫管理・会計・出荷管理など、既存システムとの連携要件をどこまで満たせるかは、決定的な評価軸です。
-
標準コネクタの有無(主要ERP・会計ソフトとの連携実績)
-
API連携の柔軟性(REST API・WebhookのドキュメントとSLA)
-
CSV連携・ファイル連携の使い勝手
-
リアルタイム連携/バッチ連携の選択肢
「現状の連携」と「3年後の連携」を同じ図に描いて、両方が無理なく成立するかを確認しておくと、選定後の手戻りが減ります。
6-3. カスタマイズ性と標準機能のバランス
商習慣が深く根付いた受発注業務では、標準機能だけでカバーしきれない要件が必ず出てきます。
一方で、過度なカスタマイズはコストと運用負荷を引き上げます。
-
標準機能で何割をカバーできるか
-
ノーコード/ローコードのカスタマイズで何が可能か
-
個別開発が必要な範囲はどこか
「標準7割・ローコード2割・個別開発1割」を目安に、業務側を標準機能に合わせて再設計できる範囲を広げるのが、長期的な運用コストを抑える鍵です。
6-4. UI・UXと買手側の使いやすさ
買手の現場担当者にとって、発注操作は本業ではありません。
「3クリックでリピート発注が完了する」「スマートフォンで隙間時間に発注できる」「QRコードを読み取ればすぐ発注画面に飛べる」といった現場目線のUIを、デモやトライアルで確認しておきたいところです。
買手が使い続けてくれなければ、どれだけ高機能でも投資効果は出ません。
6-5. インボイス制度・電子帳簿保存法への対応
法対応のアップデート速度は、ベンダーによって差が出ます。
-
適格請求書(インボイス)対応
-
登録番号管理
-
電子帳簿保存法の保存要件対応
-
改正法への追従スピード
法律の改正が今後も続くことを前提に、「アップデートが自動で適用されるクラウド型」か「自社で改修対応する余力があるパッケージ型」を選ぶか、という判断軸にもなります。
6-6. セキュリティと監査対応
BtoB受発注は、取引金額・取引先情報・与信枠など機微なデータを扱います。
-
データセンターの所在地と冗長構成
-
アクセス権限・操作ログの管理
-
セキュリティ認証(ISMS/ISO 27001/SOC 2等)の取得状況
-
多要素認証・IP制限・SSO対応
-
監査ログのエクスポート機能
大手取引先・上場企業・取引対象として組み込まれることが見えている場合、監査対応の要件も逆算しておくと選定後の対応がスムーズです。
6-7. TCO(Total Cost of Ownership)
初期費用だけでなく、3〜5年スパンの総コストで判断するのがBtoBシステム選定の基本です。
|
コスト項目 |
内容 |
|---|---|
|
初期費用 |
導入費・設定費・データ移行費 |
|
月額費用 |
プラットフォーム利用料・サポート費 |
|
連携開発費 |
ERP・在庫・会計との連携実装 |
|
カスタマイズ費 |
個別要件への対応 |
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運用保守費 |
改修・新機能対応・サポート対応 |
|
教育費 |
社内・取引先への定着支援 |
ライセンス料の安さだけで決めると、連携開発や運用保守で膨らむケースがあります。
3年TCOで比較するクセを付けると、判断の精度が上がります。
7. 主要受発注システムの特徴(フラットな並列紹介)
国内で広く採用されている代表的な受発注システム・関連プラットフォームを並列で紹介します。
向き不向きはあくまで業務特性・取引先構成・既存システム前提によって変わるため、ここでは各サービスの位置づけと特徴をフラットに整理します。
最終的な選定は、必ず公式情報と自社要件のすり合わせを経て判断してください。
7-1. クラウド型(中堅・中小・成長EC向け)
Bカート
中堅・中小規模のBtoB受発注向けクラウドサービスです。Web受発注を中心に、商品カタログ・取引先別価格・受発注処理を一気通貫で扱える設計です。
TS-BASE 受発注
クラウド型の受発注プラットフォームで、社内発注・販促物発注・物販BtoBなど幅広い受発注業務に対応します。
アラジンEC
中堅企業の卸・販売店向けに採用実績のあるクラウド型受発注システムで、得意先別の価格表や受注処理に強みがあります。
COREC
中小事業者向けのクラウド受発注サービスです。FAX・電話・メール注文をWeb化するスモールスタート用途に適しています。
楽楽B2B
中堅・中小のBtoB EC・受発注向けに展開されているクラウド型サービスで、取引先別カタログ・与信・承認フローなどB2B要件を標準で備えます。
7-2. パッケージ型・大規模向け
ecbeing B2B
国内で広く採用されているパッケージECベンダーが手掛けるBtoB向けソリューションです。大手取引・複雑な要件への対応に強みがあります。
ebisumart B2B
クラウド型ECパッケージのBtoB対応版で、自動アップデートと中〜大規模のEC・受発注業務との親和性が特徴です。
SI Web Shopping
BtoB・BtoC両対応の大規模EC・受発注パッケージで、エンタープライズ案件での採用実績が知られています。
Orange EC
中〜大規模を対象としたパッケージ型ECで、BtoB向けのカスタマイズ案件にも対応します。
7-3. コマース一体型(BtoB EC+受発注の統合志向)
Shopify Plus(B2B機能)
Shopify Plusに標準搭載されているB2B機能は、企業アカウント管理・取引先別の卸価格・支払い条件(請求書払い・ネット30/60等)・見積もり機能・数量別ディスカウント等をカバーします。
既存取引先の電子化と新規法人顧客の開拓を同じプラットフォームで進めたい事業者、BtoB・BtoC・モール・実店舗を1基盤で統合したい事業者との親和性があります。
BigCommerce B2B Edition
海外発のSaaS型ECプラットフォームで、BtoB ECと受発注を統合する設計を取ります。
Adobe Commerce(旧Magento)
エンタープライズ向けの拡張性を持ち、BtoB機能(企業アカウント・複数アドレス・共有カタログ・クォート機能等)が標準で備わっています。
7-4. タイプ別のすみ分け
各サービスの位置づけを規模・要件で並べ直すと、次のようなすみ分けになります。
|
規模・要件 |
主な選択肢 |
|---|---|
|
小〜中規模・短期間で導入したい |
COREC、TS-BASE 受発注、Bカート |
|
中堅・中小で価格表/承認フローを柔軟に組みたい |
アラジンEC、楽楽B2B、Bカート |
|
大手取引先・既存ERPと密結合 |
ecbeing B2B、ebisumart B2B、SI Web Shopping |
|
BtoB ECと受発注を統合したい |
Shopify Plus B2B、BigCommerce B2B、Adobe Commerce |
「業務効率化を起点に組むか、BtoB EC・チャネル拡張も含めて組むか」が、最初の分岐点になります。
8. 受発注システム導入の7ステップ
受発注システムの導入は、現場の業務フローの再設計を伴う中規模以上のプロジェクトになります。
導入を成功させるための7ステップを整理します。
8-1. ステップ1:現状業務の棚卸し
最初の論点は、現状の受発注業務を「見える化」することです。
-
取引先一覧(規模・取引金額・発注頻度・接続方式)
-
受注件数の推移と季節変動
-
受注・発注の業務フロー(誰が何を何分かけているか)
-
例外処理の頻度と内容(特価対応・与信例外・短納期対応)
-
既存システム構成(ERP・基幹・在庫・会計・出荷管理)
ベテラン担当者の頭の中にしかない情報を、図とリストに落とすところから始めると、後の要件定義が一気に進みやすくなります。
8-2. ステップ2:要件定義
棚卸しを踏まえ、受発注システムに求める要件を整理します。
-
機能要件:8領域の機能のうち何を必須/推奨/不要にするか
-
非機能要件:処理性能・可用性・セキュリティ・拠点間連携
-
連携要件:既存システムとのデータ連携内容と頻度
-
運用要件:社内・取引先への教育・サポート体制
要件定義の段階で、社内のキーパーソン(営業・受注・物流・経理・情シス)の合意形成を進めておくのが、プロジェクト推進の鍵です。
8-3. ステップ3:複数ベンダーへのRFP発行
要件をRFP(提案依頼書)にまとめ、複数ベンダーに提案を依頼します。
-
3〜5社程度に並列で依頼するのが現実的
-
評価基準を事前に決めておく(機能適合・コスト・実績・サポート・拡張性)
-
デモは「自社の代表的な業務シナリオ」を渡して、それに沿って動かしてもらう
「ベンダー任せのデモ」だと、自社の難しい要件が抜けたまま進んでしまうことがあります。
8-4. ステップ4:ベンダー選定とPoC(概念実証)
提案を比較し、本命候補を1〜2社に絞ったうえで、可能であればPoC(概念実証)を行います。
-
代表的な取引先・代表的な業務フローをサンプルで動かす
-
既存システムとの連携が可能か検証
-
買手の現場担当者にデモを触ってもらう
机上の比較表だけでは見えないUI/UXや運用感を、PoCで確認しておくと選定の精度が上がります。
8-5. ステップ5:マスタ整備とデータ移行
商品マスタ・取引先マスタ・価格表・在庫データを、新システム側に移行します。
-
マスタの統一ルール策定(コード体系・命名規則・カテゴリ)
-
重複・欠損・不整合の棚卸し
-
移行スクリプトの開発とテスト
-
移行リハーサル
「マスタ整備をいかに前倒しで進めるか」が、プロジェクト全体のリードタイムを左右します。
8-6. ステップ6:テスト・取引先への展開準備
システム構築と並行して、テスト・運用準備を進めます。
-
単体テスト・結合テスト・受入テスト
-
取引先向けの操作マニュアル・FAQ整備
-
取引先別の説明会・トレーニング設計
-
切替計画(並行運用期間・FAX/電話の停止タイミング)
取引先を巻き込んだ計画を、3〜6ヶ月前から共有しておくと、切替時の混乱を最小限に抑えられます。
8-7. ステップ7:段階的な切替と運用開始
切替は、リスクの低い取引先・カテゴリから順に段階的に進めるのが定石です。
-
第1フェーズ:協力的な取引先10〜30社で運用検証
-
第2フェーズ:中堅取引先まで拡大
-
第3フェーズ:全取引先への展開
-
第4フェーズ:FAX・電話の停止と完全切替
並行運用期間を設けることで、システム不具合や運用上の見落としを早期に発見できます。
「いつまでにFAX・電話を止めるか」のゴール設定を最初に明確にしておくと、現場の意思決定がぶれにくくなります。
9. 受発注システム導入で陥りがちな失敗パターン
受発注システムの導入は、技術的な難易度よりも業務設計・組織設計の難しさのほうが大きい領域です。
実務でよく見る失敗パターンを5つ整理します。
9-1. 標準機能をカスタマイズで埋めようとして頓挫
標準機能で対応できない部分をすべてカスタマイズで埋めようとすると、開発費・運用費が膨らみ、プロジェクトが大型化します。
「自社の業務を標準機能に合わせる」発想を欠いたまま要件定義を進めると、当初想定の2〜3倍の予算と期間がかかる事例が後を絶ちません。
業務側の見直しを並行して進める姿勢が、プロジェクト成功の前提条件です。
9-2. マスタ整備を後回しにする
商品マスタ・取引先マスタ・価格表が整理されないままシステムを動かすと、受注処理の精度が出ません。
「システム導入と並行してマスタ整備を進めればよい」と考えると、運用開始後に「価格が違う」「商品が見つからない」「在庫数が合わない」といったトラブルが頻発します。
マスタ整備は、システム選定と同じくらいの重要性をもってリソースを確保するのが現実解です。
9-3. 買手の意見を聞かずに売り手都合で設計する
売手側の業務効率化だけを意識した設計は、買手の現場で使われずに終わります。
買手の発注担当者は、自分の本業を持ちながら隙間時間に発注を行います。
「使いにくいシステムなら、FAXに戻したほうが早い」と判断されると、受発注システムの投資効果は出ません。
主要取引先の発注担当者にヒアリングを行い、UI・操作フロー・通知設計を一緒に検討する姿勢が、定着率を大きく左右します。
9-4. 既存システムとの連携を軽視
「受発注システム側で何でもできるはず」と既存ERP・基幹システムとの連携を軽視すると、受発注で発生したデータがERPに反映されない、在庫数がリアルタイムで連携されない、といった問題が発生します。
要件定義の最初の段階で、既存システムの構成図と連携先を全て洗い出し、データの流れと粒度を明確にしておくことが、後の手戻りを最小化します。
9-5. プロジェクト推進体制が情シス頼みになる
受発注システムの導入は、情シス部門だけでは進みません。
-
営業:取引先との関係調整、価格表の精査、説明会の主催
-
受注オペレーション:業務フローの設計、例外処理の整理
-
物流:在庫・出荷との連携、ピッキング作業への影響評価
-
経理:請求・支払いの設計、インボイス・電子帳簿保存法対応
-
情シス:システム構築、既存システム連携、セキュリティ
部門横断のプロジェクトチームを組織として正式に立ち上げ、経営層がスポンサーになることが、プロジェクト推進力に大きく影響します。
10. 受発注システムとBtoB ECの統合設計|次の打ち手の全体像
受発注システムの導入を、単なる業務効率化で終わらせず、BtoB ECや中長期のチャネル戦略と接続する発想が、ここ数年で広がっています。
統合設計の主要論点を整理します。
10-1. 受発注システムとBtoB ECを同じ基盤に載せる発想
既存取引先の電子化(受発注システム)と新規法人開拓(BtoB EC)を、同じプラットフォームで動かす設計が増えてきました。
|
切り口 |
受発注システム単体 |
BtoB ECとの統合構成 |
|---|---|---|
|
出発点 |
業務効率化 |
業務効率化+新規顧客開拓 |
|
集客 |
既存取引先のみ |
新規法人へのWeb集客も視野 |
|
カタログ表現 |
型番ベース |
カテゴリ・特集・レコメンド |
|
データの蓄積 |
取引先別の発注履歴 |
サイト訪問・閲覧・検索ログまで含む |
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拡張先 |
取引先の追加 |
BtoB EC+BtoC+モール+実店舗 |
受発注を起点にしながら、5年後の事業の絵を一緒に描いてプラットフォームを選ぶアプローチが、長期的な投資対効果を高めます。
10-2. Shopify Plus B2Bを使った統合シナリオの例
具体的な統合シナリオの例として、Shopify Plusに搭載されているB2B機能を活用した構成があります。
-
企業アカウント管理:取引先ごとに購買担当の複数アカウントを管理
-
取引先別カタログ:見せる商品・隠す商品を取引先別に制御
-
卸価格・数量割引:取引先別・数量別の価格を自動適用
-
支払い条件:請求書払い・ネット30/60等のB2B特有の支払い管理
-
見積もり:見積→受注のフローをWeb画面で完結
-
マルチストア:BtoB専用ストアとBtoCストアを同一管理画面で運営
既存取引先向けのクローズドな受発注機能と、新規法人向けのオープンな集客機能を1つの基盤に統合できる点が、コマース一体型の特徴です。
加えて、Shopifyの管理画面と16,000以上のアプリエコシステムを使い、配送・会計・CRM・ロイヤリティ・分析といった周辺機能を組み合わせて運用できる構成です。
詳細な料金・機能は、要件と取引規模に応じてお問い合わせいただく必要があります(Shopify Plusの料金は公式非公開)。
10-3. 受発注システム×OMS×WMS×ERPの全体像
受発注システムの導入を機に、コマース基盤・物流基盤・基幹基盤との統合設計を整理しておくと、中期の投資判断がしやすくなります。
[買手]──┬─ EDI(基幹間自動連携)──┐
├─ Web受発注(ブラウザ) ──┤
├─ BtoB EC(カタログ/UX)─┤→ [受発注システム]
└─ FAX・電話・メール─────┘ ↓
[OMS(複数チャネル統合)]
↓
[WMS(倉庫内作業)]
↓
[TMS・配送業者連携]
↓
顧客
↑
[ERP・会計] ←─ 売上・債権・在庫残高
[CRM・MA] ←─ 顧客プロファイル・LTV
受発注システムは「買手⇔売手のデータ交換のハブ」、OMSは「複数チャネルの注文を業務処理に落とし込む司令塔」、という役割分担で構成すると、後々の拡張がしやすくなります。
10-4. B2BとB2Cを1基盤で動かす設計
BtoBとBtoCを別々のシステムで運営している事業者にとって、受発注システムとコマースの再設計はそれらを統合する好機です。
統合時に整理しておきたい論点は次のとおりです。
-
顧客マスタの共通化(個人と法人のID統合)
-
在庫プールの共通化と、B2B/B2C別の引当ルール
-
価格表の分離(一般価格・B2B卸価格・代理店価格)
-
与信・請求書払い・支払い条件のB2B側ロジック
-
注文承認フロー(B2B特有の上長承認)
-
レポーティングの分割(B2B/B2Cで分けて見る指標)
これらをコマースプラットフォーム側・受発注システム側・ERP側のどこで担うかを決めておくと、運用がシンプルになります。
10-5. 段階的な統合アプローチ
最初から完全なBtoB EC+受発注+OMSの統合を目指すと、プロジェクトが大型化して頓挫しやすくなります。
段階的に進めるなら、次のような順序が現実的です。
-
既存取引先の受発注を1つのシステムに集約(Web受発注の開始)
-
商品マスタ・価格表・取引先マスタの統合
-
既存ERPとのデータ連携(受注→売上計上の自動化)
-
与信・承認フロー・インボイス対応の整備
-
新規法人向けのBtoB EC機能の追加
-
OMSと連携した複数チャネル統合(BtoB+BtoC+モール)
-
AIアシスト・自動化(不正検知・需要予測・問い合わせ自動応答)
3〜5年の中期計画として描いておくと、各フェーズの投資判断もしやすくなります。
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まとめ
受発注システムは、紙・FAX・電話・メールに残るBtoB取引を電子化し、売手と買手の双方の業務を1つの基盤で結ぶ仕組みです。
人手不足・物流2024年問題・インボイス制度・電子帳簿保存法といった環境変化のなかで、「あと3〜5年は紙で持たせる」という選択肢が現実的でなくなりつつあるいま、多くのBtoB事業者にとって導入検討の優先度が上がっています。
受発注システム検討を成功させる6つのポイント
-
受発注システムを「売手と買手の接点を電子化する層」と定義する
EDI・Web受発注・BtoB EC・OMSとの役割分担を整理し、自社にとっての受発注システムの責任範囲を明確にします。 -
タイプ選定はクラウド型・パッケージ型・コマース一体型で並列に比較する
取引先構成・既存システム・3〜5年の事業計画から逆算して、設計思想の合うタイプを選びます。 -
連携設計を要件定義の中心に据える
機能の網羅性ではなく、ERP・在庫・会計・WMSとの連携要件を起点に評価軸を組み立てます。 -
マスタ整備と業務フロー再設計をプロジェクトの前段で進める
商品・取引先・価格・在庫のマスタ整備と、業務フローの再設計が伴わないと、受発注システムは本来の力を発揮できません。 -
TCOで判断する
初期費用・月額費用・連携開発費・運用保守費・将来の拡張費を、3〜5年スパンで比較します。 -
BtoB ECと統合する未来図を持って選ぶ
業務効率化だけでなく、3〜5年後のBtoB EC展開・チャネル拡張まで視野に入れて、プラットフォームを選びます。
最初の一歩を踏み出そう
「完璧な受発注システム設計」を目指して動けなくなるよりも、「自社の最も大きな受発注ボトルネック」を1つ特定し、そこから始めるほうが、現場の手応えは早く出ます。
属人化したベテラン業務の見える化か、FAX・電話の数件をWeb化することか、特定の大手取引先向けのEDI接続か、それともBtoB EC立ち上げと一体化した抜本刷新か。
足元の課題を1つに絞り、そこを起点に受発注システムを核にした基盤の再設計を進めていくのが、実務的な近道です。
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参考文献
-
経済産業省『令和5年度 電子商取引に関する市場調査』2024年
-
経済産業省『令和6年度 電子商取引に関する市場調査』2025年
-
国税庁『電子帳簿保存法関係』
-
国税庁『インボイス制度(適格請求書等保存方式)』
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Shopify公式:https://hk241.xb-11.com/jp
-
Shopify Plus公式:https://hk241.xb-11.com/jp/plus




