起業やEC事業の立ち上げ方を考えたとき、「0円起業で、できるだけお金をかけずに始めたい」「外部資金に頼らずにビジネスをやりたい」と感じる方は多いのではないでしょうか。
この記事では、自己資金だけで事業を育てる「ブートストラッピング」という考え方について、基本からメリット・デメリット、資金管理やマーケティングの工夫までをわかりやすく解説します。

ブートストラッピングとは
ブートストラッピングとは、外部からの投資や借入に頼らず、個人の貯蓄や既存の設備・リソースのみを使って事業を立ち上げ、成長させる経営手法です。ブートストラッピングを実施した場合、投資家などの外部の意向に左右されず、創業者自身の判断で事業運営を進められる点が大きな特徴です。
また、起業後も資金調達を行わないため、事業拡張や設備投資はビジネスの収益や初期資産をもとに段階的に進めていく必要があります。この手法が自社に適しているかどうかは、事業内容や市場環境のほかビジネスオーナーの目指す事業のあり方や保有リソースによって異なります。自社の状況に照らし合わせて検討しましょう。
ブートストラッピングの語源・歴史
「ブートストラップ(Bootstrap)」は、もともとブーツを履く際に引っ張るためのつまみ革を指す言葉です。そこから近代英語で「pull oneself up by one’s bootstraps(ブートストラップを引っ張って自分自身を持ち上げる)」という慣用句が生まれ、「本来は不可能なこと」を意味する表現として使われるようになりました。さらに転じて、「誰かの助けに頼らず、自力で物事を成し遂げる」という比喩的な意味でも用いられるようになります。
また、コンピュータ分野では、システムを起動することを表す「ブート(boot)」という言葉として定着しました。この考え方がビジネスの世界にも広がり、外部から資金調達を行わず、自己資金や社内リソースだけで事業を立ち上げ、成長させていく手法を「ブートストラッピング(Bootstrapping)」と呼ぶようになりました。

ブートストラッピングによるメリット
- 創業者が投資家など外部からの影響を受けることなく、事業の意思決定ができる。
- 借入に頼らないため、利息の支払いや返済期限によるキャッシュフロー管理の複雑化などを抑えられる。
- 立ち上げ当初から資金管理を徹底することで、健全な支出判断の習慣が身につく。

ブートストラッピングによるデメリット
- ビジネスに対する需要が高まっても、在庫や原材料などを十分に確保するための資金が足りず、事業の成長が制限されたり停滞したりする可能性がある。
- 投資家とリスクを分担しないため、起業家自身がほぼ全面的に資金面でのリスクを負う。

ブートストラッピングにおける資金管理のポイント
ブートストラッピングの経営手法では、企業活動において手元の資金や内部リソースを最大限に活用します。つまり固定費を抑え、不要な支出を避けて、支払いタイミングを最適化するということです。以下は、その具体例です。
- 従業員を雇用した場合など、必要になるまではオフィスを借りない。必要になった場合も、まずは低コストのコワーキングスペースを検討し賃料を抑える。
- 高価なオフィス家具や設備にお金をかけすぎない。中古品の購入か合理的であればリースを活用して、現金支出を抑える。
- 他社と物々交換を行い、現金を使わず商品やサービスを調達することで、手元の資金を守る。
- 仕入先が早期支払いによる割引が可能な場合は、優先的に支払う。
- 仕入先と支払期限の交渉を行う。通常は、追加の利息を支払うことなく30日までの支払い猶予があるため(月末締め翌月末払い)、〜60日(月末締め翌々月末払い)に延長可能か相談してみる。ただし下請法により請求・受領日から60日以内に支払う必要があるので注意。
- ファクタリング(入金予定の売掛金や受取手形を専門業者に譲渡し、現金化する仕組み)は、早期に現金化できる一方で手数料がかかるため、必要な場合に限定して検討するのが望ましい。資金繰りが逼迫した場合に、売掛債権を専門業者に売却することで、請求額から手数料(相場は10%前後)を差し引いた金額を即時に受け取ることが可能。

ブートストラッピングにおけるマーケティング戦略
ブートストラッピング経営を進めるうえでのマーケティング戦略は、多額の予算を投じるのではなくアイデアや工夫で成果を出す手法が重要となります。
例えば、以下のような低コストかつ効果的なやり方があります。
- 顧客への15分の無料相談、購入商品のケア用キット、サンプルの無料提供などを行う。
- リピート購入を促すために、特典など顧客満足度を上げるプログラムを設ける
- 購買額を増やすために買い物かごを用意する。
- デザイナー、著名人、シェフなど、商品に合ったゲストを招いたイベントで集客を行う。
- 顧客・見込み客のメールリストを作成し、継続的に情報発信する。
- 満足度の高い顧客にレビューや推薦コメントを依頼する。
- 企業ブログを立ち上げ、ニュースや情報を発信する。
- 他社・他者のブログにコメントする。
- ターゲット顧客が利用しているSNSに公式アカウントを開設する。
- 出展者ではなく来場者として見本市などに参加し、ブース費用をかけずにネットワーキングを行う。
- インフルエンサーと提携し、SNS経由で販売を促進する。
まとめ
ブートストラッピングとは、外部資金に頼らず自己資金と自社リソースでEC事業を立ち上げ・成長させる方法です。経営の自由度が高くなり、資金管理力が身につく一方、成長スピードや資金不足のリスクには注意が必要です。
難しい場合には、個人事業主向けの補助金・助成金などを組み合わせることで資金面の選択肢が広がり、初期リスクの軽減や成長促進に役立つ場合もあります。社内のリソースや自社のビジョンを加味して、自社にとって最適な方法を目指しましょう。
ブートストラッピングに関するよくある質問
スタートアップにおけるブートストラッピングとは?
スタートアップにおけるブートストラッピングとは、外部からの支援や資金に頼らずに事業を立ち上げ、成長させていく手法を指します。投資家や融資に依存するのではなく、自己資金や既存のリソースを使ってゼロから始めるのが特徴です。多くの場合、限られた資金で物事を進めるための工夫や、創造的な問題解決が求められます。
ブートストラッピングのメリットとデメリットは?
ブートストラッピングのメリットは、外部の投資家に左右されずに経営の自由度を保てることや、無駄な支出を抑える堅実な経営体質が身につきやすい点です。デメリットは、自己資金に限りがあるため、成長スピードが遅くなったり、大きな投資が必要な局面で資金不足に陥るリスクがある点です。
どんなビジネスがブートストラッピング向き?
ブートストラッピングには初期費用が比較的少なくて始められるビジネスが向いています。例えばEC事業、オンラインサービス、デジタルコンテンツ販売など、在庫や設備投資を最小限に抑えやすいビジネスモデルはブートストラッピングと相性が良いといえます。
文:Miyuki Kakuishi





