「デジタルノマド」という言葉で頭に浮かぶのは、ノートパソコンと最小限の荷物だけを持って世界を旅し、あるときは異国のカフェで、またあるときはビーチでカクテルを飲みながら仕事をこなす、夢のようなライフスタイルです。
リモートワークの普及により、この理想的な働き方は、多くの人にとって手の届くものになりました。
この記事では、デジタルノマドの概要、職種、必要なスキルなど、デジタルノマドを目指す人に役立つ情報を紹介します。
目次

デジタルノマドとは
デジタルノマドとは、リモートワークをライフスタイルとして取り入れ、テクノロジーを活用して場所に縛られない働き方を実践する人を指します。パソコンやスマートフォン、インターネット環境があれば、どこでも仕事ができる点が特徴です。
無線インターネットやクラウドベースのアプリ、VoIPなどを利用し、ホテル、カフェ、公共図書館、コワーキングスペースなど、さまざまな場所からリモートで働きます。こうした柔軟な働き方により、旅をしながら仕事をすることが可能です。
多くのデジタルノマドは、個人事業主やフリーランスとして活動しており、特定のオフィスに出勤するような伝統的な雇用形態に属さないケースが一般的です。そのライフスタイルは、比較的長期の滞在や移動を伴う、遊牧民(ノマド)のような生活様式と結び付いています。なお、単発の請負業務で成り立つ「ギグエコノミー」もフリーランスが主体ですが、配送業務などのように現場で行う仕事が典型例であり、リモートで完結するデジタルノマドとは性質が異なります。

デジタルノマドはどのくらいいるのか
デジタルノマドという働き方は、近年急速に広がっています。Demandsage(英語)によると、2024年時点で世界には約4,000万人前後のデジタルノマドがいると推定されており、その数はコロナ禍以降、大幅な増加傾向にあります。特にアメリカでは、約1,810万人のデジタルノマドがいると報告されており、これは全労働者の約10%に相当します。また、日本人のノマドワーカー数については、約80万人とする調査(nomads.com、英語)もあります。日本でもテレワークの定着に伴い、今後はさらなる増加が見込まれています。

デジタルノマドの収入はどのくらいか
デジタルノマドの収入は、働き方やスキル、経験、活動地域によって異なりますが、Nomads.com (英語)が公表している統計データから傾向が読み取れます。同サイトによると、デジタルノマドの年収の中央値は約85,000ドル(約1,300万円)とされており、この水準が一般的な年収の目安と考えられます。
働き方の内訳を見ると、正社員としてフルタイムで働いている人が4割弱を占めており、スタートアップのオーナーとフリーランスを合わせると、こちらも約4割弱となっています。デジタルノマドはフリーランス中心というイメージが強いですが、安定した雇用形態でリモートワークを行う人も少なくありません。
なお、SNSやブログ、オンラインコンテンツなどを通じた収益を得ているケースもあります。特に、特定の分野で知名度やフォロワーを持つ人の場合、こうした活動も大きな収入源となります。

デジタルノマドであることの利点
どこからでも働ける
デジタルノマドの最大の利点は、信頼できるインターネット環境があれば、場所を選ばずに働ける点です。滞在先ホテル、カフェ、コワーキングスペースなど、自由に場所を変えながら仕事ができます。旅をしながら新しい土地や文化に触れつつ収入を得られる点は、デジタルノマドならではの魅力といえるでしょう。
柔軟なライフスタイルを実現できる
働く時間やペースを自分で調整できることも、大きなメリットです。決まった勤務時間や通勤に縛られず、生活リズムや体調、予定に合わせて働けます。そのため、趣味や人々との交流を大切にしながら仕事を続けることが可能です。服装や髪型の制約が少ない点も、自由度の高い働き方を後押ししています。
生産性と創造性が向上する
環境を変えて働くことで、生産性や創造性が高まると感じる人も少なくありません。新しい景色や文化、人との出会いは、思考の刺激となり、発想の幅を広げるきっかけになります。また、オフィス特有の人間関係や雑音から距離を置くことで、仕事に深く集中できるのも利点です。
新しい興味深い人々と出会える
デジタルノマドとして働くことで、世界中のさまざまな人と出会う機会が広がります。コワーキングスペースでは、同じような働き方をする人々と交流でき、情報交換や新たなつながりのチャンスが生まれます。オンラインコミュニティやイベントを通じて、人脈を広げやすい点も特徴です。
デジタルノマドであることの欠点
収入が不安定になりやすい
デジタルノマドの多くは、フリーランスや個人事業主、スタートアップの運営など、固定給に依存しない働き方を選んでいます。そのため、仕事量や契約状況によって収入が変動しやすく、安定したキャッシュフローを維持するには工夫が必要です。病気やトラブルなどで一時的に働けなくなる可能性もあるため、複数の収入源を持つことや、十分な貯蓄を確保しておくことが重要になります。
孤独を感じやすく、人間関係が希薄になりやすい
拠点を頻繁に移動する生活では、長期的な人間関係を築きにくく、孤独を感じる人も少なくありません。コワーキングスペースやオンラインコミュニティを活用することで交流の機会は得られますが、意識的に人とのつながりを維持する姿勢が求められます。
社会的な信用を得にくい場合がある
国や状況によっては、デジタルノマドという働き方が十分に理解されておらず、社会的な信用を得にくいケースもあります。住宅の賃貸契約やローン、クレジットカードの審査などで、不利に働くことがあります。また、国境を越えて移動する場合、銀行口座へのアクセスや金融サービスの利用が制限されることもあります。
ビザや税務、保険などの手続きが複雑になる
デジタルノマドとして海外で滞在する場合、国ごとに異なるビザ要件を理解し、条件を満たす必要があります。取得のために一定の収入や預金残高を求められるケースもあり、航空券やビザ取得にかかる費用も無視できません。また、収入の申告や納税、保険への加入などを自分で管理する必要があり、制度を正しく理解していないとトラブルにつながる可能性があります。
デジタルノマドになる方法
- オンラインで完結する収入源を設計する
- リモートで働けるスキルを身につける
- 小さな仕事から始めて実績を作る
- 生活コストと持ち物を見直す
- 健康・通信・決済の基本環境を整える
- ノマド向きのマインドセットを持つ
1. オンラインで完結する収入源を確保する
デジタルノマドになるためには、まず場所に依存しない収入源を確保することが欠かせません。重要なのは、「自分は何ができるのか」「そのスキルやサービスをオンラインで提供できるか」を整理し、ネットで稼ぐ方法を確立することです。特定の職種や資格が必要というわけではなく、サービスや成果物をインターネット上で提供できれば、十分に成立します。
2. リモートで働けるスキルを身につける
デジタルノマドに多いのは、プログラミング、ウェブデザイン、ライティング、動画編集、マーケティングなど、パソコンとネット環境があれば完結するスキルです。現在はオンライン教材も充実しているため、基礎からスキルを習得できます。いずれのスキルも、「オンライン完結するサービス」として提供できる形に落とし込むことが重要です。
3. 小さな仕事から始めて実績を作る
スキルを身につけたら、いきなり独立するのではなく、副業や小規模な案件から始めて実績を積むのが現実的です。クラウドソーシングや知人の紹介などで最初の仕事を獲得し、経験を重ねながら自分に合った働き方を見極めましょう。
4. 生活コストと持ち物を見直す
デジタルノマドは移動を前提とするため、持ち物を最小限にして生活する意識が必要になります。あわせて、サブスクリプションなどの固定費を減らし、家計を身軽にすることで、収入が減少した場合のリスクに備えやすくなります。生活費を把握し、キャッシュフローを管理できる状態を作っておくことが、ノマド生活への移行を支えます。
5. 健康・通信・決済の基本環境を整える
場所を問わず働くためには、保険、通信、支払い手段の準備も欠かせません。海外滞在を想定する場合は、旅行保険や医療保険への加入を検討し、国際ブランドのクレジットカードなど現地でも使いやすい決済手段を用意しておくと安心です。また、スマートフォンはSIMフリー端末を利用することで、通信コストを抑えやすくなります。
6. ノマド向きのマインドセットを持つ
デジタルノマドは、自分のペースで働きながらも、仕事がルーズにならないよう、厳しく自己管理を続ける姿勢が求められます。目的意識を明確にし、なぜノマドとして働きたいのかを自分なりに言語化することにより、モチベーションの維持にもつながります。個人事業主としての成功を目指すなら、起業家精神も必要となるでしょう。

デジタルノマドに最適な仕事
デジタルノマドとして働ける仕事の前提条件はシンプルで、ノートパソコンやスマートフォンを使い、100%リモートで業務が完結することだけです。この条件を満たす仕事は、数多く存在します。
たとえば、Shopifyを活用したeコマース分野もその一つです。以下では、特にデジタルノマドとの相性がよい代表的な職種を紹介します。
eコマース起業家
オンラインストアを運営するeコマース起業家(アントレプレナー)は、デジタルノマドと相性の良い職種の一つです。発送や在庫管理を外部に任せたり、デジタル商品を扱ったりすることで、物理的な拠点に縛られずに事業を運営できます。マーケティングや顧客対応もオンラインで完結するため、仕組みが整えば、移動しながらでもビジネスを継続しやすい点が特徴です。
ライター・編集者・翻訳者
文章や言語を扱う仕事は、リモート化が進んでおり、デジタルノマドとして働く人も多い分野です。ウェブ記事、広告文、書籍、翻訳など、成果物はデータで完結するため、場所を選びません。フリーランスとして活動する人も多く、比較的少ない初期投資で始めやすい点も魅力です。
プログラマー・エンジニア
ソフトウェア開発やウェブ開発を行うプログラマー・エンジニアは、デジタルノマドの中でも特に多い職種です。アプリやシステムの開発はオンラインで完結し、需要も安定しています。スキル次第では高い報酬を得やすく、フルタイム雇用、業務委託、個人開発など、働き方の選択肢が広い点も特徴です。
デザイナー(ウェブ・グラフィック)
ウェブサイトやアプリ、広告素材などを制作するデザイナーも、ノマドに向いた職種です。成果物が視覚的に分かりやすく、オンライン上のやり取りだけで業務が進むケースが多いため、場所の制約を受けにくい傾向があります。
マーケター(デジタルマーケティング・SNS運用)
デジタルマーケターは、分析ツールや広告管理画面などをノートパソコンから操作できるため、完全リモートで働きやすい職種です。成果が数値で可視化されやすく、クライアントや雇用主との距離があっても評価されやすい点が特徴です。SNS運用やコンテンツマーケティングなど、個人で始めやすい業務も多く存在します。
カスタマーサポート
電話、メール、チャットを通じて顧客対応を行うカスタマーサポートは、早くからオフショアサービス活用などでリモート化が進んだ職種です。24時間対応のニーズも多く、時差が生かせる点でノマド向きといえます。特定企業の専属で業務を行い、安定した収入を得たい人に向いています。
その他の職種
以下は、主流ではないものの、デジタルノマドとして従事できる職種の例です。
- 動画編集者:素材の受け渡しや編集作業がすべてオンラインで完結
- オンライン講師・チューター:語学や専門スキルを遠隔で指導
- コーチ・コンサルタント:ビデオ通話を通じた個別支援
- バーチャルアシスタント:事務作業や調整業務をリモートで代行
- コンテンツ配信者:広告やアフィリエイトによる動画・ブログ収益化
デジタルノマドとして働くのに最適な場所
デジタルノマドとしてどこの場所が最適かは、各個人の職種、スキル、収入と生活費、趣味嗜好、文化的な相性などによって大きく左右されます。自分に合った国や都市を知るための参考としてよく使われているのがNomads.com(英語)です。
Nomads.comは、世界中のデジタルノマドからの投稿や投票をもとに、都市ごとの情報を集約したデータベースです。リモートワークに適した場所として、次のような都市が上位に挙がっています。
- ポルトガル・リスボン
- タイ・バンコク
- イギリス・ロンドン
- スペイン・バルセロナ
- フランス・パリ
これらの都市は、インターネット環境や生活の利便性、国際的な受け入れ体制などの面で評価が高く、多くのデジタルノマドに選ばれています。行ってみたい場所としては、東京もトップレベルの人気があります。
なお、デジタルノマドとして海外で働く場合、ビザや税務、滞在条件などの制度は国によって大きく異なります。実際には、短期滞在の観光ビザで入国し、比較的短期間(1カ月以内)滞在する人も多く、必ずしも各国のデジタルノマド向けビザ制度を利用しているとは限りません。いずれにしても、滞在先を決める際には、事前に各国の制度を個別に確認することが重要です。

デジタルノマドとして生活するためのヒント
ここでは、パスポート、Visa、通信環境などの基本的な準備以外で、異なる国や地域で生活しながら働く際に役立つポイントを紹介します。
自分に合った生活をデザインする
滞在期間や移動頻度、持ち物の量などは、人によって好みが異なります。短期間で場所を変えたい人もいれば、一定の場所に長く滞在した方が安心して働ける人もいます。他人のやり方を真似るのではなく、自分が安全かつ生産的に働ける環境を基準に、生活スタイルを調整していくことが大切です。
集中力を高める工夫により生産性を維持する
旅先では観光や新しい体験の誘惑が多く、仕事に集中しづらくなることがあります。その対策として有効なのが、一定時間を「集中作業」にあてる工夫です。たとえば、1日のうち数時間だけ明確な目標を設定し、通知やメールを遮断して作業に没頭する「ディープワーク」という方法があります。これにより短時間でも成果を出しやすくなり、仕事と自由時間の両立につながります。
地元の文化を知る
滞在先の文化や習慣を知り、地元の人々と関わることは、ノマド生活をより充実したものにします。現地の食文化や生活リズムを理解することで、孤独感が和らぎ、滞在そのものが意味のある経験になります。仕事だけに集中するのではなく、その土地ならではの体験を取り入れて心身のバランスを保ちましょう。
Wi-Fiを事前に確認する
デジタルノマドにとって、インターネット環境は仕事の生命線です。訪問国や都市の通信インフラ事情を十分に把握する必要があります。また、カフェや宿泊施設、コワーキングスペースなど、作業を想定している場所のWi-Fi環境は、事前に調べておくことが重要です。Wi-Fiが使用できない場合、仕事に大きな支障が出るため、各施設のウェブサイトや口コミを活用して確認しておくと安心です。
コワーキングスペースを有効活用する
多くの場合、滞在中の宿泊先が主な作業場所になりますが、気分転換や集中力向上のために、カフェやコワーキングスペースを併用するのも有効です。コワーキングスペースでは、安定したネット環境に加え、他のリモートワーカーとの交流が生まれることもあります。
まとめ
デジタルノマドは、リモートワークを活用し、場所に縛られずに働くという選択肢の一つです。海外を旅をしながら働く人もいれば、国内で拠点を移しながら生活する人もおり、そのスタイルは一様ではありません。重要なのは、オンラインで完結するスキルや収入源を持ち、自分に合った生活リズムや働き方を設計することです。
制度や環境面などの課題を事前に理解し準備を進めることで、無理のない形でスタートできます。旅行と仕事を切り離すのではなく、生活の中で両立させたい、と考えているなら、デジタルノマドという働き方は検討する価値のある選択肢といえるでしょう。
デジタルノマドに関するよくある質問
デジタルノマドとは何か?
デジタルノマドとは、インターネットを使って場所に縛られずに仕事をする人を指します。宿泊先ホテル、カフェ、コワーキングスペースなどから、開発、執筆、デザイン、マーケティングなどの仕事をリモートで行うのが一般的です。海外を移動する人もいれば、国内で拠点を変えながら働く人もいます。
デジタルノマドであることは合法か?
デジタルノマドとして働くことは合法ですが、滞在国のビザ制度の確認は必要です。たとえば バリ島(を含むインドネシア)では、外国人向けにデジタルノマド向けの長期滞在ビザ制度が設けられています。収入や預金残高などの要件を事前に確認する必要があります。
デジタルノマドはどのようにお金を稼ぐのか?
デジタルノマドの収入源は、リモートで完結する仕事が中心です。代表的な例として、プログラマーやウェブデザイナー、ライター、翻訳者、マーケター、オンライン講師などがあります。企業に雇用される場合もあれば、フリーランスや個人事業として複数の仕事を組み合わせるケースもあります。
デジタルノマドになるにはどうすればいいのか?
まずは場所に依存せず収入を得られるスキルや仕事を持つことが第一歩です。次に、サイドビジネスなどで実績を積み、生活費や働き方の見通しを立てます。国内でリモートワークに慣れながら、段階的に理想のスタイルへ移行していくのが着実な方法です。
文:Norio Aoki





